スポーツクラブといえば、スイミング、ジム、ランニングマシン、ダンス、ヨガ。終わった後は清潔なシャワーを浴びつつ、サウナでリフレッシュ。なぜここに、卓球コースが入らないのか、いつも不思議に思っていた。
場所も取らない、3歳から90代まで愛好者は幅広く、競技人口も多い。何より、怪我も少ない。
全国のスポーツクラブに気軽に体験できる卓球教室があれば、もっと卓球へのハードルが低くなるのにと思っていたところ、大手スポーツクラブ「ティップネス」にキッズ向けの卓球スクールが立ち上がったと聞いた。
ティップネスでは去年の秋から、まず東京の国領店、下井草店の2店舗で“卓球プロジェクト”がスタートした。
その担当者たちを取材すると、コロナ禍の逆風を受け止めつつ、それでもあふれる卓球プログラムへの思いと可能性を語ってくれた。
(取材:槌谷昭人/ラリーズ編集長)
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なぜティップネスで卓球事業がスタートしたのか?
新宿から京王線で30分ほどの国領駅前に店舗を構えるティップネス国領店は、2019年秋から卓球事業導入の検討をスタートした。「卓球ブームを肌で感じるなかで、実際に取り入れるとすると、どうなんだろうと」。経緯を語るのは国領店チーフの浅野智啓氏だ。
写真:国領店チーフの浅野智啓氏/撮影:ラリーズ編集部
ティップネス各店舗の中でも施設が広い国領店は、キッズプログラムが最も多い。新たなプログラムの考案中に、卓球が浮上した。
「お子様の習い事ランキングではスイミングが1番多い。他にスタジオの中でできるプログラムはないかと話を進めていく中で、子どもだけでなくシニア層にもつながる可能性を持った卓球をぜひやりたいと」。生涯スポーツという側面が評価され、卓球が採用された。
「今在籍してるお子様のほとんどは、うちのスイミングなどを習っています。(卓球は)体験プログラムから入会いただいて、その無料期間が8月末でいったん切れるんですが、誰も辞めずに残ってくれています」と、浅野氏は手応えを語る。
指導を務めるプロコーチ陣の採用理由
今回、実際に国領店でのキッズプログラムにお邪魔し、小1・2年生クラスを取材した。
写真:指導する大串コーチ(写真右)/撮影:ラリーズ編集部
国領店のコーチを務めるのはYOYO TAKKYUから派遣された大串春文コーチ、下井草店はYOYO TAKKYU社員の舘岡俊矢コーチが指導を行っている。ティップネスの卓球事業では、国領店、下井草店ともに元実業団選手の川口陽陽氏が代表を務めるYOYO TAKKYUのプロコーチが指導を担当する。
「コーチにフレッシュな方が多く、指導理念に共感を示してくれた」(スクール企画部 柳田大介氏)、「見に行ったとき、若いスタッフさんたちと子どもたちに活気があった。何よりも上手でした」(下井草店支配人 青木隆氏)という背景があり、いくつか候補のあった中で、YOYO TAKKYUに白羽の矢が立った。
写真:YOYO TAKYU代表の川口陽陽氏/撮影:ラリーズ編集部
「スイミングなど他のスポーツもやっているお子さんたちだからか、上達が早いことに本当に驚いています」川口陽陽氏も、スポーツクラブでの卓球プログラムに手応えを感じている。
チーム競技を参考にした練習メニュー
取材当日のプログラムでは、2名の女子生徒が参加していた。
ティップネス・キッズの指導理念は、“OPEN MANY DOORS!”。様々な体験を通して子どもたちの未来の選択肢を増やすことを意識し、卓球も競技としてではなく「スポーツの習い事」の1つとして位置づける。
写真:球突きを行う子どもたち/撮影:ラリーズ編集部
コーチ陣は、生徒一人一人に寄り添い、褒めて楽しませるコーチングを心がけ、取材当日も生徒たちはすでにコーチと打ち解けているようで、開始早々楽しそうに球突きをしつつ、笑顔が絶えない。
写真:ティップネス国領店のキッズプログラムの様子 マシンの使った練習も取り入れられている/撮影:ラリーズ編集部
写真:奥ではボールを運ぶ生徒、手前ではコーチの球出しでフォア打ちをする生徒がいる/撮影:ラリーズ編集部
ティップネスが従来の卓球教室と異なるのは、“システム性”を取り入れたメニューだ。
①ボールをラケットに乗せて一定距離を歩く
②一人でのサーブ練習
③コーチの球出しによる多球練習
④マシンによる多球練習
と各台、各箇所ごとに異なるメニューを設定し、クリアすれば次の項目へとシステム的にメニューが進行する。
写真:ティップネス国領店のキッズプログラム/撮影:ラリーズ編集部
「今まで、卓球コーチの練習のやり方は1対1が前提でした。でも今回のやり方はサッカーのようなチーム競技の練習メニューの形をとっています。子どもたちも次に自分が何をしたらいいかが明確にわかるので、意欲的になると思います」。コーチの言うように生徒たちは「コーチ、できたよー!」と嬉しそうな声をあげながら、1つずつのメニューを楽しんでクリアしていった。
“ティップネス卓球”できっかけ作りを
国領店には他にも3年生以上のクラスがあり、こちらは9名の生徒が在籍している。また、下井草店も小1~3クラスに5名、小4~6クラスに2名の子どもが通っている。ほとんどの子どもが、スイミングなどティップネスの他プログラム利用者の掛け持ちとのことだ。
今後の展開として、下井草店支配人の青木氏は「卓球プログラムの内容を常に進化させていかなければならない。普通の卓球場にはない“ティップネス卓球”みたいな魅力を、YOYO TAKKYUさんと一緒に作っていきたいと考えています。キッズプレーヤーの人口が増えることは、裾野を広げ、そのスポーツが強くなることにも繋がります。総合スポーツクラブは、まず、そのきっかけ作りができれば」と使命感に燃えている。
写真:下井草店支配人 青木隆氏/撮影:ラリーズ編集部
スイミング、英会話、ピアノなどが並ぶ子どもたちの習い事ランキングに、そう遠くない将来「卓球」が肩を並べ、スポーツクラブで子どもたちが、卓球をはじめ多くのスポーツに触れて可能性を開花させていく。
なにせ今「卓球」は、中学校の部活動として、入部制限さえありえる、人気の部活の一つなのだ。
「習い事としての卓球」も、あながち夢物語でもない。
総合スポーツクラブが本腰を入れて挑戦する卓球プログラムに、期待が膨らむ。
写真:笑顔を見せる子どもたち/撮影:ラリーズ編集部