卓球の見方は5分で変わる(6)メダルの鍵握る「ダブルス」の奥深さ | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:平野美宇(日本生命)・石川佳純(全農)/提供:ittfworld

卓球ニュース 卓球の見方は5分で変わる(6)メダルの鍵握る「ダブルス」の奥深さ

2020.02.13

文:ラリーズ編集部

5分でガラリと変わる卓球の見方、第6回のテーマは「ダブルス」だ。

卓球のダブルスでは、シングルスの実力を持つ者同士が組んだペアが強いとは限らない。シングルスのワールドランキングの高い者同士が組んだペアがランキングの低い者同士のペアに負けるという、いわゆる番狂わせも起こりやすい。

2019年12月のITTFワールドツアーグランドファイナルの女子ダブルスにて、木原美悠(JOCエリートアカデミー・2月世界ランキング49位)/長﨑美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園・同60位)ペアが、世界ランクトップ5の2人が組む中国の孫穎莎(スンイーシャ・同2位)/王曼昱(ワンマンユ・同4位)を下す大金星を挙げた。

ダブルスにはシングルスには無い戦術面の面白さや、ならではの魅力がたくさん詰まっている。今回はそんな「ダブルス」のルールや奥深さを伝えていきたい。

卓球の見方は5分で変わるシリーズ
(1)点を獲るか?拾うか?
(2)16cmのトスが明暗を分ける「サーブ」に注目
(3)プレイしている時間は2割。残りの8割は「掛け声」「表情」を見るべし
(4)60秒のタイムアウトで何ができるか?
(5)「3つのレシーブ」がメダルの色を決する

ダブルスならではのルール

交互に打球する


写真:ダブルスでは大きな動きで打つことができる/撮影:千葉格/アフロ

卓球のダブルスならではのルールの一つが、「ペアを組んだ二人は交互に打たなければならない」というルールだ。このルールが卓球のダブルスという競技の奥深さを生み出していると言って良いだろう。

一人が連続して打つわけではないので、次の打球のための「戻り」を意識する必要が少なく、思い切って打つことが可能となる。一方で、次に打つパートナーが打ちやすくなるような球を打つ、いわゆるチャンスメイクのためのプレーをするなど、戦術面を意識したプレーも必要だ。

サーブレシーブでサインを出す


写真:ダブルスのサーブレシーブ時にはサインを出す/撮影:ラリーズ編集部

また、サーブレシーブにおいては、次に打つパートナーがどういうプレーをしたいのか、どういうプレーをして欲しいのかという点をよく考えてお互いにサインを出し、意思疎通を図る必要がある。

卓球は回転やコースによって、ある程度は次の打球を予測することが可能なため、相方がするプレーから次自分がするプレーを頭に入れる準備が重要となる。

サーブは対角線上で半面にしか出せない


図:ダブルスのサーブのコース/作成:ラリーズ編集部

ダブルスならではのルールである「サーブは対角線上で半面にしか出せない」というものがダブルスを面白く、そして難しくしている。卓球のダブルスのサーブにおいては、右利きの選手のフォアサイド側から対角線上にしかサーブを出すことができない。

シングルスであれば、レシーブ側は主にサーブの回転、長さに加え、コースを意識する必要があるが、ダブルスではこのルールによりサーブのコースが台の半面に限定されるため、レシーブ側が圧倒的に有利となる。

サーブが台から出てしまうと、レシーブ側に強打されるリスクが高まるため、まずは相手の強打を防ぐべく、台の中で2バウンドするような短いサーブを出す展開が多く見られる。最近では「チキータ」という技術が登場し、台上からバックハンドによる攻撃的なレシーブをすることが可能となったため、より一層レシーブ側が有利となってきている。

ペアの組み合わせによるメリット・デメリットとは

ペアの利き腕の組み合わせによって、どのようなメリットもしくはデメリットがあるのか。順番に見ていきたい。

右利き×左利き

森薗/吉村ペア
写真:ジャパンOP2019での森薗政崇・吉村真晴ペア/提供:ittfworld

まずは、「右利き×左利き」のペアだ。上述のとおりペアの二人は交互に打たなければならないため、次に打つパートナーの邪魔にならないように動くことが重要である。

「右×左」のペアは利き腕が同じ者同士のペアに比べると、パートナーの邪魔になりにくい。それに加えて、ダブルスはサーブのコースが限定されているため、左利きの選手は常に回り込んだ状態でレシーブをすることができる。

「右×左」のペアはダブルスにおけるプレーのしやすさとレシーブのしやすさの2つのメリットを享受でき、最もオーソドックスなペアリングと言える。

右利き×右利き


写真:三部航平/及川瑞基(ともに専修大)/撮影:ラリーズ編集部

次に、「右利き×右利き」のペアだ。右利きの選手の方が多いため、こちらのペアリングもよく見られる。

「右×右」のペアの場合は、レシーブの際に、先ほど紹介した「チキータ」をやりやすいという点がメリットとして挙げられる。もちろん「右×左」のペアの場合でも、レシーブの際にチキータをすることはできるが、右利きの選手がチキータをする場合には、左利きの選手の立ち位置と被ってしまうことがある。

対して、「右×右」のペアの場合は、パートナーの立ち位置をあまり気にすることなく、チキータの後スムーズに台から離れることができる。

一方、デメリットとしては、「右×左」のペアと比べると、パートナーの邪魔にならないよう、かつ自分も次の打球に備えるために、より大きく動く必要があるという点が挙げられる。

左利き×左利き


写真:水谷隼(木下グループ)/丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部

最後に、「左利き×左利き」のペアだ。「左×左」のペアはあまり見る機会は少なく、珍しいペアと言える。

「左×左」のペアのメリットは、やはりレシーブ時の左利きの優位性を二人とも享受できるという点にあるだろう。また、サーブから3球目までの展開をシングルスと同じようにプレーできるという点もメリットとして挙げられる。

左利きの選手の多くは、シングルスの場合でもダブルスと同じ立ち位置からサーブを出し、そこから3球目の展開へと移行するため、「左×左」のペアはサーブから3球目までをシングルスに近い要領でプレーすることができる。加えて、極めて珍しいペアリングであるため、相手がやり慣れていないという点もメリットとして挙げられるだろう。

一方、デメリットとしては、「右×右」のペアと同様だが、「右×左」のペアと比べると、打球後により大きく動かなければならないという点が挙げられる。

東京五輪団体戦メダルの鍵を握るダブルス

いよいよ7月に迫った東京五輪団体戦。悲願の金メダル獲得を果たすためには団体戦1試合目にあるダブルスでの勝利は必要不可欠なものと言える。

男女ともにどのペアが出場することになるかまだ分からないが、ハイレベルな試合が繰り広げられることは間違いない。東京五輪団体戦、また、それまでに行われるワールドツアーにおいては、「ダブルス」にも注目してみよう。卓球の新たな魅力に気付けるに違いない。