文:ラリーズ編集部
3大会連続での五輪代表選出、2019年世界選手権シングルスベスト8と、世界の舞台で輝かしい戦績を残してきた丹羽孝希(スヴェンソン)。だが、意外にも丹羽が全日本を制したのは2013年大会の1度のみ。昨年も準々決勝で戸上隼輔(明治大)に敗れ、ベスト8で終わっている。
そこで今回は、そんな丹羽のトーナメントの見どころを紹介。丹羽が勝ち進んで行った場合どの選手と当たる可能性があるのかを、それぞれ選手ごとに解説する。
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6回戦で新旧日本代表対決
4回戦から登場する丹羽は、2020年関西学生選手権王者の津村優斗(関西大)や前回大会ベスト32の渡辺裕介(協和キリン)らと当たる可能性があるが、順当に勝ち上がっていった場合、6回戦で吉田海偉(東京アート)と対戦する可能性がある。
写真:吉田海偉(東京アート)/撮影:ラリーズ編集部
現在、日本リーグ1部の東京アートに所属する吉田は、全日本シングルス優勝2回、2010年世界選手権男子団体銅メダルを獲得した経歴を持つ、元日本代表選手。中国式ペンホルダーの使い手で、昨年の全日本では優勝した宇田幸矢(明治大学)に敗れはしたものの、39歳とは思えない超人的なフットワークを駆使したドライブで宇田を苦しめた。
写真:熱いガッツポーズを見せる吉田海偉(東京アート)/撮影:ラリーズ編集部
そんな新旧日本代表対決となったこの対決だが、意外にもこれまで吉田と丹羽が公式戦で対戦した試合は数えるほどで、全日本に限って言えば2013年の男子ダブルスが直近の対決で、シングルスでは2009年の1度きり。2009年当時の丹羽はまだ中学生だった。そのため、相性の良い悪いを判断する材料は少ないというのが正直なところだ。
加えて、吉田は現在日本リーグを主戦場としているが、2017年まではワールドツアーにも参戦しており、2018年の全日本選手権では36歳にしてシングルス3位にも輝いている。
現役の代表という面で言えば丹羽に分があるが、上記の実績を持つ吉田も実力では全く劣っていない。優勝を目指す丹羽にとっては、大きな壁の一つと言えるだろう。
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準々決勝で戸上にリベンジなるか
丹羽にとって最大の山場となるのは、戸上隼輔との一戦だ。
写真:戸上隼輔(明治大学)/撮影:ラリーズ編集部
両者は勝ち上がれば、準々決勝で相まみえる。これは昨年の準々決勝と同じカードで、そのときは戸上が4-0のストレートで勝利を収めていた。
しかし、この試合以降二人は様々な場面で対戦することになった。11月に行われた明治大学ドリームゲームでは丹羽が3-2で勝利し、12月のTリーグの2試合ではそれぞれ戸上が勝利。
新型コロナウイルスの影響で半年以上公式戦ができなかったことを考えると、ここまでの頻度で同じ相手と対戦することは珍しく、今回の全日本で対戦が実現すれば、それはまさに因縁の対決と言えるだろう。
写真:2020年大会の丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部
そんな両選手はプレースタイルこそ違えど、「高速」という共通したキーワードを持っている。
丹羽は前陣で相手のドライブを利用する「高速」カウンターが特徴。世界の舞台でも各国の選手が放った渾身のドライブをいとも簡単にカウンターするシーンは、卓球愛好家なら一度は目にしたことがあるだろう。
写真:戸上隼輔(明治大学)/撮影:ラリーズ編集部
対する戸上は、強烈な破壊力を持つ「高速」両ハンドと、昨年の全日本でも丹羽を苦しめた「高速」チキータが武器。前陣で両ハンド連打を叩き込むスタイルは現代卓球そのもので、一度ハマりだすと止まらない。そのことは、昨年の準決勝の張本智和(木下グループ)戦で証明済みだ。
果たして丹羽は、最大の壁である戸上を撃破して、自身2度目となる全日本優勝への道筋を作れるのか。
丹羽孝希インタビュー
写真:丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:伊藤圭