文:ラリーズ編集部
<第48回全国高校選抜卓球大会 2021年3月26日~28日 三重・サオリーナ>
全国高校選抜卓球大会2日目、偏差値70を誇る進学校の兵庫高が、女子学校対抗2回戦に登場した。
奇跡的 掴み取った全国1勝
兵庫高校は、兵庫県内有数の県立進学校だ。スポーツ推薦で強い選手が集まるわけではない。しかし、大会初日の1回戦では、光ヶ丘女子高(愛知)を相手に3-1で勝利し、全国1勝を手にした。
写真:小川貴嗣監督(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
兵庫高校OBでもあり、チームを率いる小川貴嗣監督は、全国での1勝をこう振り返る。
「今年のチームの力的には、(全国選抜に)通ることの方が奇跡的。僕らは出場校の中で55番目か56番目やからプレッシャーなく頑張れと言い続けた。1勝できたのはめちゃくちゃ大きい」。
夢を叶えたツインエース
写真:大槻優葉(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
チームを支えるのは、2年生ツインエースの大槻優葉と司田和波だ。2人は、小学校から同じチームで全国を目指し戦ってきた。初の全国舞台となった今大会で、嬉しい初勝利を掴み取った。
大槻が「中学のときは全国出場が叶わなくて、同じ高校に進学して叶えられて良かった」と語れば、司田も「中学のときも全中を目指してたけど、悔しい負け方をして行けなかった。高校で実現できて良かった」と笑顔を見せる。
写真:司田和波(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
小学校から戦ってきた2人は信頼関係も抜群だ。
大会初日の光ヶ丘女子高戦。4番シングルスの司田は、ゲームカウント2-0リードから2-2に追いつかれた。苦しい展開の中、ふと隣の台に目をやると5番シングルスの大槻がプレーしている。
写真:大槻優葉(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
「もし万が一、私が負けても勝ってくれる」。
落ち着きを取り戻した司田は、11-3で5ゲーム目を締め、自らの勝利でチームに全国1勝をもたらした。
「信頼があったから安心して最終ゲーム戦えました」。そう笑顔で振り返った。
写真:司田和波(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
37年ぶりの晴れ舞台は幻に 再び出場し1勝
実は前年度も兵庫高校は、近畿大会で最後の9枠目に滑り込み、全国選抜出場を決めていた。「去年は強い子がいて、出場自体が確か37年ぶりだった」(小川監督)。だが、新型コロナウイルス感染症の影響で大会自体が中止。兵庫高校の晴れ舞台は幻となった。
そして、迎えた今年度。再び近畿大会で最後の9枠目に滑り込み、全国選抜出場を決めた。
写真:司田に声をかける小川監督/撮影:ラリーズ編集部
「近畿大会の9位決定戦では、神戸市大会や県大会でも勝てない子が、フルゲームの9本で勝って決めた。そのときはめちゃくちゃ感動しましたね」。続けて小川監督は「今回の1回戦も3番手の子が勝利してくれた。チーム力が少しずつ上がってきた」と手応えも口にした。
写真:1回戦で勝利をあげた平岡志野(兵庫)/撮影:ラリーズ編集部
「頭を使ってやりなさい」 文武両道のコツ
勉強との両立が求められる進学校では、練習時間を満足に取れるわけでもない。それでも全国で勝ち星を掴めた要因を小川監督に聞くと、「頭を使って卓球しなさいとは言い続けてます」と返ってきた。
写真:兵庫高を率いた小川監督/撮影:ラリーズ編集部
続けて「『君らは勉強の偏差値は高いけど、卓球の偏差値は35やで』と言い続けて、まずは卓球偏差値50を目指して頑張れとちょっとずつ意識を変えるようにしました」と教えてくれた。
写真:強豪の遊学館を相手に接戦を演じた大槻優葉(兵庫高)/撮影:ラリーズ編集部
今大会、兵庫高は、2回戦で全国上位常連の遊学館(石川)に0-3で跳ね返された。
だが、青春を懸けて努力し、チーム全員で全国大会1勝を挙げたことは、彼女らの確かな自信と財産になったことだろう。