*写真はプロ麻雀リーグ「Mリーグ」の藤田晋チェアマン 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ
大会報道 卓球「Tリーグ」と同時期開幕の「麻雀プロリーグ」 2つの新リーグの共通点と課題
2018.08.11
取材・文:武田鼎(ラリーズ編集部)
秋に開幕する卓球の「Tリーグ」では選手や特別ルールなどの概要が次々と明らかになっているが、実はもう一つ注目すべきリーグがある。「Mリーグ」だ。2つの新リーグがまったく同時期に立ち上がろうとしているのだ。奇しくも両者ともに開幕は今年の秋を予定している。これは「M」も調べなければなるまい。実は両者には共通点が多くある。もちろん競技内容も違えば、目指す理想の姿も異なる。無論比較は強引なのは十分承知の上である。ただ、Mリーグを紐解けばTリーグも学ぶべき点はあるはず。またその逆もしかり。「T」を「M」から考察してみよう。
TとM、二つの新リーグの共通点と課題
「T」と「M」。これまで両者ともに国内約500万人とも言われるプレーヤー人口を抱え、コアなファンがついていたが、マスメディアではほとんど注目されていなかった。そのためプロ野球やJリーグのようにシーズン中に定期的に報道される大規模なトップリーグが存在せず、結果的に既存のプレーヤーたちが競技一本では生活ができない状況に陥っていた。
また、卓球も麻雀も近年、女性や子供、老人のプレーヤーが増加している点も共通している。「紫煙に包まれ、いぶし銀の男たちが酒を飲みながら麻雀卓を囲む」のはすでに過去のイメージ。今や雀荘は禁煙化が進み、認知症予防として老齢のプレーヤーもしばしば見かける。
卓球においても同様の流れは続いている。
全国90か所に教室を展開、会員数3万6千人を誇る麻雀教室「ニューロン麻雀スクール」では現在では1000人以上の子どもが通うというから驚きだ。やはり、卓球、麻雀ともに「頭脳戦」の要素があることが競技年齢を選ばず裾野の拡大に一役買っているのだろう。
両リーグが立ち上がるにあたって、課題となるのが類似する業界団体の存在だ。Tであれば実業団チームが参加する日本リーグが存在しているが、Mに至っては日本麻雀プロ連盟と日本麻雀プロ協会など複数団体が存在する。既存団体といかに共存共栄を図り、業界全体を盛り上げるかが課題だ。
MよりTが有利な点
こうした前提を踏まえて、TリーグがMリーグに対して先んじている点は多い。例えばバタフライやVICTAS、ニッタクなど有名メーカーが存在し、確固たる用具・ウェア販売ビジネスのマーケットが存在することだ。麻雀卓や牌の市場に比べればはるかに大きいことはプロリーグ化にあたってプラスであることは間違いない。
そして一番大きいのが競技イメージの違いである。今後「Mリーグ」が戦わなければならないのは「麻雀=賭け事」というダーティーなイメージだ。賭けマージャンをした選手は「除名処分」にするとMリーグ代表理事の藤田普氏(サイバーエージェント創業者)は明言している。卓球が「健康で健全なスポーツ」という認知がされているのと比べればこの差は大きい。
TがMに学ぶこと
かたや、TリーグがMリーグに学ぶべきポイントも多い。一言で言えば「外部の血」が入っている点だろう。「Mリーグ」の代表理事にはサイバーエージェント創業者で自身も稀代の雀士だという藤田晋氏が就任した。その効果はすぐに現れた。サイバーエージェントが参戦したことで電通、博報堂、KONAMIなど有名企業が相次いでリーグに参加した。
他にもサイバーエージェントが得意とする「メディア戦略」でも藤田氏の手腕が発揮されている。要するに「ド派手」なのである。例えば「Mリーグ」の発表以前からAbemaTVでは大掛かりな麻雀特番を企画してきた。「負けたら坊主になる麻雀大会」その名も「坊主麻雀」などユニークな麻雀番組を次々と作るだけでなく、「麻雀専門チャンネル」を設け「麻雀を観戦する」というカルチャーを作ってきた。さらには発表直後には大々的に選手のドラフト会議を開催し、俳優の萩原聖人氏がプロチームに参戦するなど「話題作り」においてはさすがという他ない。おそらく麻雀業界内部の人材であればここまで大きな話題にはならなかったはずだ。
そして最も強力な「外部人材」の登用が川淵三郎氏だ。川淵氏はMリーグ最高顧問への就任している。なんと言ってもJリーグ、Bリーグの立ち上げに携わってきた。いわば“プロリーグ立ち上げ請負人”であり各界に顔の効く最強の助っ人だ。藤田氏と川淵氏の外部人材タッグで一気に既存の業界のしがらみに縛られることなく垂直立ち上げを目指そうとするのはいかにもIT企業らしいアプローチだ。
高度な頭脳戦で、深くハマればハマるほどその面白さにのめり込んでいく「卓球」と「麻雀」。2018年秋、2つの新リーグはどんな姿で私達の前に現れるのか。期待は高まる一方だ。
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