名門・上宮高校に潜入 打倒日本一のために貫く"ハイリスク・ハイリターン"な超攻撃卓球 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:上宮学園中学・上宮高校の卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 名門・上宮高校に潜入 打倒日本一のために貫く“ハイリスク・ハイリターン”な超攻撃卓球

2021.07.17

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

上宮高校は、関西の卓球強豪校として全国的に知られている。五輪2大会出場の遊澤亮氏や濱川明史(andro Japan)、御内健太郎(シチズン時計)らをOBとして輩出しており、遊澤氏が在学中に1994年には、インターハイで日本一にも輝いている。

上宮卓球のスタイルは、強力なサービスと威力ある3球目攻撃を中心とした“超攻撃卓球”だ。実業団で活躍するOBの御内も、カットマンながらわかりづらいサービスと鋭いフォアドライブも武器とし、濱川も強力なサービスと3球目攻撃を持ち味としている。


写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

今回は上宮卓球部の練習場にお邪魔し、小林一弘監督、主将の中田泰成に話を聞いた。“なにわの超攻撃卓球”とも言える卓球スタイルを貫く根底には、「日本一のチームに勝つ」という上宮の伝統的な考えがあった。


【上宮学園中学・上宮高校卓球部】大阪府の強豪校。1994年にはインターハイ団体優勝を飾っている。OBには五輪2大会出場の遊澤亮氏や濱川明史(上宮高校→近畿大学→日鉄住金物流→andro Japan)、御内健太郎(上宮高校→早稲田大学→シチズン時計)ら。総監督は、前男子ジュニアナショナルチーム監督の河野正和氏。

「日本一の選手に何回かやったら1回は勝てる」ハイリスクハイリターンな卓球


写真:小林一弘監督(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――上宮の卓球は、サービスが上手くて、3球目攻撃も鋭い超攻撃型卓球というイメージがあります。なぜそのような卓球スタイルなのでしょうか?
小林監督:こういう感じで作りたいなというのは、日本一になるような選手やチームに何回かやったら1回は勝てる卓球

安定を求めると、力の差があると10回やったら10回とも負けるような形になってしまう。時々ポカっと負けてしまうけど、上手いことハマったら日本一なれるような選手にも勝つときがある。そういうスタイルで作ろうと思ってやっていますね。

――いわゆるハイリスク・ハイリターンな卓球スタイルなんですね。
小林監督:上宮にいる選手は、ほとんどが全国に出ていないとか、出ても1回戦で負けたとかばかりです。安定したラリーをしてても小さい頃から強い選手には勝てない。点数になるボールを多く打って欲しいと思ってやらせてます。


写真:練習を見守る小林一弘監督(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――元々実績のある選手に、大一番で勝つための卓球スタイルということですね。
小林監督:今いる選手で、日本一のチームや選手にどうやって勝とうかと考えてスタイルを作っています。

それにはもちろんサービスが良ければ、勝てる確率も上がるので、サービスは一番うるさく言ってますね。今はコロナでなかなかできないんですけど、的にサービスを連続何本当てるまでは練習終わらないみたいなこともしてましたね。


写真:主将の中田泰成(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

超攻撃卓球を貫き「日本一のチームに勝とう」


写真:主将の中田泰成(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――サービスと3球目攻撃に特化したメニューがあるのかと思っていたのですが、主将の中田選手に聞くと「基本は全部課題練習です」と。意外でした。
小林監督:試合が無いときに体を鍛える練習はチームで一緒にやりますが、高3から中1までいるので、なかなか同じようなメニューでやるのも難しいんです。

「課題はこれだから、こういう練習はどう?」と言うくらいで、工夫するのは本人たち。やってみて違うな思ったら自分たちで勝手に変えていくのをOKにしています。


写真:中学から高校までが混じって、選手それぞれが課題練習をこなす/撮影:ラリーズ編集部

――各々の自主性にまかせながらも、ハイリスク・ハイリターンな“上宮卓球”にチーム全体がなっていくのはなぜでしょう?
小林監督:口ではうるさく言うんでね(笑)。

「その卓球やったら名電に100回やったら100回負けるよ」とか。


写真:指導する小林一弘監督(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――そういう意味では3月の全国選抜で愛工大名電高と対戦した試合(※)は、監督から見ていてどうでしたか?
※3回戦で対戦し愛工大名電 3-0 上宮(①篠塚大登 3-0 安井崇 ②濵田一輝 3-1 中田泰成 ③谷垣佑真 3-2 辻井聡一)で敗戦
小林監督:(3番シングルスで谷垣とフルゲームだった)辻井に関しては、もうちょっと精度上がったり厳しくいけたりすれば、いけるかもしれないなと。辻井は中学から上宮にいるので、ある程度こういう卓球をして欲しいというのに近い形ではやってくれた。

ただ、名電側は「上宮には負けたらまずい」と思って完全に受け身になっていた。だから、もし本当にうちが強くなったら、あんな感じではやってくれないと思ってますが、勝てる形に近くはなったかなと。


写真:2年生の辻井聡一(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――負けはしたけど一定の手応えはあったということですか?
小林監督:負けることの方が多いので、なかなか上手いこといかないんですけどね(笑)。

でも方向性自体は、それこそ濱川や御内のときから変わってません。

日本一のチームに勝とう、あの当時は青森山田が強かったんで山田に勝とうということでやっていた。僕が高校生の時も熊谷商に勝とうとやっていた。あまり意識したことはなかったんですけど、そういうスタンスのチームなんでしょうね。


写真:OBの御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

小林監督:だから、日本一になってる選手と当たると、「さあ本番!」みたいな感じにはなりますよね。

インターハイのダブルスでも西祥平(現・立命館大学)/岸田竜輝(現・近畿大学)が、野田学園の戸上隼輔/宮川昌大(ともに現・明治大学)に勝ったり、国体で中田裕太(現・関西学院大学)が田中佑汰(現・愛知工業大学)に勝ったり、あとは濱川が水谷隼(木下グループ)に勝ったりとかね。

――確かに伝統的に大物食いをしてますね。
小林監督:ベンチに入って「これはどうやっても勝てへんな」と思いながら試合を見るのは面白くないし、保護者も応援するとき面白くない。一発あのすごいのが入ってたらなとか、もうちょっとミスがなかったら勝てたのになとか言ってる方が良いかなと思ってます。

「これをミスしなければ」とか「あのロングサーブ良いのが入ってたら」とか選手も練習することが明確になりますしね。


写真:小林一弘監督(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

「心が変わらないと卓球も何も強くならない」

ここで、上宮高校卓球部主将の中田泰成にも話を聞いた。


写真:主将の中田泰成(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――主将の中田選手が思う、上宮卓球部の特徴はどういうところでしょうか?
中田泰成:卓球と同じように人間性も成長していきたいと思っているチームです。
――具体的にはどういうことでしょうか?
中田泰成:礼儀、挨拶、声の大きさやハキハキ喋る、行動を早くするなどです。

自分は入学前、全然喋れなかったんですけど、河野先生と小林先生に人間性などについてたくさん教えられました。


写真:主将の中田泰成(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

――特に印象に残っている言葉はありますか?
中田泰成:「心が変わらないと卓球も何も強くならない」という言葉がすごく心に残っています。

卓球だけしても強くならない。人間性からどんどん変えていかないと卓球は上手くならないと最初の頃に言われました。

――インターハイに向けての目標を教えてください。
中田泰成:目標はシングルスはメダルを獲ることで、ダブルスと団体は優勝目指して頑張ります。


写真:主将の中田泰成(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

赤マット、空調、テレビモニター…充実の練習環境

練習環境の充実ぶりについても、小林監督に聞いた。


写真:上宮の練習場/撮影:ラリーズ編集部

――赤マットで空調も完備と練習環境もかなり良いですね。
小林監督:コロナで去年の5月末まで休校になってて、6月1日からここが使えるようになったんですよ。

それまでは1階と地下に教室を改造した卓球場があって、1階は卓球台3台、地下は5台くらい置いていました。


写真:上宮高校卓球部の旧卓球場/提供:上宮高校

小林監督:地下はラリーでバックスイングを取ったら当たるような狭いところだったのでメインは1階の3台を使っていました。そこで30年くらいやっていました。


写真:上宮高校卓球部の地下卓球場/提供:上宮高校

――そんな環境で日本一になっていたとは驚きです。
小林監督:ただ、ルールが変わって打ち合いも多くなったので、ちょっと広いところにいかないとなと思っていました。

ちょうど校舎建て替えで動くチャンスがきたので、学校にちょっと融通してもらって、元々図書館だったここを改造して卓球場にしてもらいました。僕がいろんな学校や卓球場を見てきた中の理想を、できる範囲の中でやってもらいました。

――どこら辺にこだわったんでしょうか?
小林監督:例えば、床がコンクリートだったのを卓球の競技用マット入れてもらったり、壁にはテレビモニターを設置しました。


写真:上宮の練習場の柱にはテレビが設置されている/提供:上宮高校

――テレビモニター気になってました。
小林監督:大きいテレビではできるだけ世界の大会など見本になりそうな選手の映像を多く流す。

卓球台の近くのテレビはカメラが後ろに付いてて、つけたら何秒か遅れでプレーが見れるようになってるんですよ。そういうのも盛り込みました。


写真:練習に打ち込む上宮の選手たち/撮影:ラリーズ編集部

――昔とは環境が大違いですね。
小林監督:昔はどうやって少ない台で練習するかという工夫がまず必要でした。でも今は、強くする工夫をするだけになった。

昔から練習場が良くなると弱くなるチームが多いので、この1、2年は特に頑張ってやらなあかんなと思ってます。


写真:小林一弘監督(上宮高校)/撮影:ラリーズ編集部

インターハイでは「一発逆転できるような試合を」

――最後に、夏のインターハイに向けて今年のチームはどうでしょうか?
小林監督:変わらず名電に勝ちたいと思ってやってるので、名電以外のところにポコっと負けることは全然あります。

でも、名電のところまで行って名電にどんな卓球ができるか。1年間、コロナで試合をやってなかった中、選抜で戦えたのである程度明確になってると思います。

――インターハイの目標としては?
小林監督:組み合わせ次第なので、ベスト8に入りたいとかベスト4に入りたいとかはあんまりないです。そこを意識すると、負けたらあかんチームにちゃんと勝とうとして、面白くない卓球になってしまうので。

元々一発逆転しないといけないような選手ばかり入ってきてるので、一発逆転できるような試合をさせたいなと思ってます。もちろん日本一にはなりたいですけど、日本一のチームとやって、日本一のチームに勝ちたい、という感覚ですね。

上宮卓球部は、実績を持つ選手が少ない中、“打倒日本一”を果たすべく超攻撃卓球を貫いている。関西の雄が全国の舞台で、日本一のチームを相手に一発逆転の大物食いを見せられるか。夏のインターハイでの上宮から目が離せない。

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