一般受験生だけでインハイベスト16 安田学園卓球部の強さの秘訣は"仲の良さ"と"ミーティングの短さ" | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:安田学園高校メンバー/撮影:槌谷昭人

卓球インタビュー 一般受験生だけでインハイベスト16 安田学園卓球部の強さの秘訣は“仲の良さ”と“ミーティングの短さ”

2021.10.17

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Rallys副編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

今回は東京都の安田学園高校卓球部にお邪魔した。全国中学校卓球大会団体戦に初出場した“黄金世代”が高校3年生となった2021年インターハイでは、学校対抗ベスト16、エースの伊藤礼博がシングルスベスト16とランク入りを果たした。

成績を見ると強豪校にも関わらず、練習の雰囲気を見ると良い意味で“普通の部活”という感じがした。監督や生徒に聞いても「授業後に週6回の練習はあるが土曜日も半日授業があるため、そこまで練習時間は長くない」「テスト1週間前には部活は休みになる」といわゆる一般的な学校生活の、普通の部活動だ。

では、なぜそこまで強くなれたのか。

安田学園高校卓球部の特徴を知るべく、行田和広監督、主将の廣田遼太朗(3年)、エースの伊藤礼博(3年)に話を聞いた。


【安田学園高校卓球部】東京都の中高一貫校。2021年のインターハイには東京都予選を2位通過し出場。インターハイ学校対抗でベスト16入り、シングルスで伊藤礼博がランク入りを果たした。中学卓球部も強く、2018年、2019年には全国中学校卓球大会で団体英、2021年はベスト8に入っている。

全員一般受験生でインターハイ学校対抗ベスト16


写真:行田和広監督 安田学園高校卒業生で日本体育大学から一般企業を経て2008年から安田学園高校卓球部の顧問に/撮影:槌谷昭人

――安田学園高校卓球部の特徴はどういうところでしょう?
行田監督:学校としては勉強が売りなので文武両道です。試験前に「自主練しても良いよ」と言ってもみんな勉強しますね(笑)。

あとスポーツ推薦はないので、全員一般受験してもらって、受かった子たちを預かって頑張ってやってます。


2021年のインターハイでベンチに入った行田監督

――一般受験生だけでインターハイ学校対抗ベスト16は凄まじいです(笑)。選手たちはなぜ強くなると思いますか?
行田監督:とにかく手を抜かないですね。卓球で入学してきてるわけではなくて、勉強もちゃんとやって入ってくるので意識も高いです。

自分たちでよく考えて練習メニューを組み立てて、集中力も高くやってるので、短時間でも伸びるのかなと思います。本当に一生懸命やりますね、みんな。


安田学園高校卓球部のメンバーは自分たちで練習相手を決め、メニューもこなしていく

行田監督:少し前には高校から卓球を始めた子もいました。「ゲームセンターの遊びでちょっと卓球やって楽しかったから入ります」と言って入部して、3年間しっかりやって、東京都でベスト64に入るくらいまで成長しましたね。


「入部届を持ってきた時に『卓球やったことあるの?』って聞いたら『はい!ゲームセンターで』と言われました(笑)」

「卓球は子どもらしく。私生活は大人っぽく」


写真:行田和広監督(安田学園高校)/撮影:槌谷昭人

――行田監督が指導面で意識されていることはありますか?
行田監督:「何でも全力でやって欲しい」ということです。例えば、ボール拾い一つにしてもダラダラやるんじゃなくて、スピーディーにやれば時間も取れます。

あとミーティングでよく言うのは「卓球は子どもらしく。私生活は大人っぽく」ということですね。子どもは何でもただがむしゃらにやるので、そういう風に卓球はしてもらって、私生活に関しては社会人に近づけるようにやってくれとはずっと言ってますね。

――監督ご自身がここは自分の特徴的な指導かなと思うところはどこですか?
行田監督:ミーティングが短いですね。試合が終わって、会場でチームで輪になって長々反省を話すとかは一切しないです。

次の日に嫌な気持ちで練習場に来てほしくないので、要点だけ言って自分で考えて、次の日練習場に来てもらえるのがベストだと思っています。


練習中のミーティングも手短に行われていた

――面白いですね。昔からそういう方針ですか?
行田監督:ここ最近ですね。

卓球は結局個人スポーツで、個々にはそもそも声をかけていきます。全体の前で1人1人の課題など言っても時間の無駄だなと思いましたし、要点だけ伝えたほうが生徒に伝わる実感があるので、そういう風に心がけました。


行田監督は練習中、個々人に声をかけて指導を行っていた

「仲が良くてみんなで高め合えるチーム」主将・廣田遼太朗

続いては3年生主将の廣田遼太朗に話を聞いた。中学から安田学園に入り、6年間過ごしてきた廣田は安田学園卓球部をどう語るのだろうか。


写真:廣田遼太朗(安田学園高校)/撮影:槌谷昭人

――安田学園に入って良かった点は?
廣田遼太朗:自分で行動できるようになったことです。

小学生までは自分で考えなくても指導者の方が教えてくれたり、指摘してくれたりしてたんですけど、自分で考えて行動しないといけないと中学3年生くらいに気づきました。そこから少しずつ結果を残せるようにもなりました。


インターハイでもレギュラーとして学校対抗ベスト16に貢献

――廣田選手が主将を務めたチームはどういうチームでしたか?
廣田遼太朗:全国の中で見てもトップクラスで仲は良かったと思います。

先輩後輩の隔たりがなくて、練習がオフの日でも、先輩が後輩を誘ってスポーツセンターでやったり、逆に後輩が先輩を誘ったりします。

仲が良くてみんなで高め合えるチームだったと思います。


練習ではオールフォアフットワークを撮影させてくれました

エース・伊藤礼博「仲の良さは安田学園の強み」

安田学園のエースを務めた伊藤にも話を聞いた。インターハイ学校対抗ではシングルス全勝でチームをベスト16に導き、シングルスでもランク入りを果たした。

今は受験勉強に重きを置いているとのことで、今回の取材のために1週間ぶりに卓球部の練習に参加してくれた。


写真:伊藤礼博(安田学園高校)/撮影:槌谷昭人

――全中では団体3位に入って、高校ではエースとしてインターハイでベスト16に入りました。安田学園卓球部での生活はどうでしたか?
伊藤礼博:ホープス2位ので中川(泰雅)や廣田、関口(朋弥)らと仲間になって、団体を組めれば全中で上位も目指せると思って入学して、3位にもなれました。

ただ、「エースとして」という実感はないです。「お前が勝て」みたいな感じは全然なくて、のびのびプレーさせてもらえてたので、試合も別に怖くないしやりやすかったです。

先輩後輩関係なく安田学園はみんなが本当に仲がいいんで、練習終わってみんなで一緒に帰ったりするのが楽しかったです。それが6年間ずっと続いてたので、仲の良さは安田学園の強みになっていました。


写真:伊藤礼博(安田学園高校)/撮影:槌谷昭人

――今日は取材のために練習参加ありがとうございます。今は大学進学に向けて、受験勉強中なんですよね?
伊藤礼博:はい、今は卓球を控えていて自己推薦入試のための勉強をしています。今日もこれから塾に行く予定があります(笑)。


「好きな科目は数学です」

伊藤礼博:でも来年大学に入ったときにちゃんと試合で使っていただけるように、周りの選手に差をつけられないようには練習もするつもりです。
――勉強も大変だと思いますが、合格に向けて頑張ってください!

最後に今後の目標をお願いします。

伊藤礼博:6年間安田学園で先生やコーチ陣から習ったことを活かして、大学でも関東学生優勝、全日学優勝を目指してやっていきます。

その中でスポーツばっかりにならないように、社会人になったときにやっていけるように勉強も卓球も頑張りたいと思います。


インターハイシングルスではベスト16に入った

行田監督「社会に出たときに困らない生徒を育てていきたい」

最後に行田監督にチームの目標を尋ねた。


写真:練習を見守る行田和広監督(安田学園高校)/撮影:槌谷昭人

――最後に今後のチームの目標はありますか?
行田監督:卓球で勝ちたいというところもあるんですけど、卓球を通じて社会に出たときに困らない生徒を育てていきたいです。

私自身、卓球部の顧問になりたいではなく、子どもたちが好きで学校の先生になりました。学校生活をしっかりやりながら一つでも多く勝てるような、高校を出てから社会生活に困らないような子をたくさん育てられれば、チームとしては一番良いですね。


行田監督と生徒の対戦 生徒が勝てばその日のトレーニングの量が多くならずに済むという特別マッチ

中高一貫の安田学園は、中高が一緒に練習をする。仲が良く学年の分け隔てがないため、強い高校生と中学生が練習することもあり、中学、高校ともにチーム全体が強くなっていくのだろう。

主将の廣田やエースの伊藤、中川ら高校3年生が築いてきた「自ら考えて短期集中で手を抜かない」というスタイルは、下の学年の成績にも表れており、今後の安田学園卓球部も楽しみだ。

取材動画はこちら

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