全国の舞台に立てなかった先輩たちの思いを受け継ぎ、東海大菅生高校卓球部は、創部以来最高となるインターハイ学校対抗ベスト16入りを果たした。
昨年は関東大会で優勝するなど、東海大菅生高校卓球部史上“最強”との呼び声も高かった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により、全国高校選抜、インターハイは中止となり、“史上最強”のチームの全国の舞台は幻と終わった。
その無念を晴らすべく、そして先輩たちに負けじと努力を重ね、過去最高の成績を叩き出した東海大菅生高校卓球部の練習にお邪魔した。
【東海大菅生高校卓球部】1983年に学校が開校されたときに創設された東京都あきる野市にある卓球強豪校。「多摩から全国へ」のスローガンを掲げ、2021年8月のインターハイでは学校対抗で創部初のベスト16入りを果たした。8決定戦でも、3位に入った静岡学園高校を相手に2-3と肉薄した。
初のインハイベスト16に裏には去年の両エースの存在
写真:後藤由一監督 東海大菅生高校から日本体育大学を経て菅生学園初等学校に勤務している/撮影:槌谷昭人
まず昨年度がコロナでインターハイ予選すらも行われず、その手前の全国高校選抜も中止になってしまいました。直前の関東選抜で優勝して全国選抜のシードを獲っていて、周りの方々にも「昨年はチャンスだったね」とよく言われましたけど、正直自分もそう思ってます。
ただ、そのときの主力メンバーの髙橋天馬(現・法政大)、笠井智衆(現・専修大)。この2人の存在は非常に大きかったなと今でも思ってます。
写真:2020年9月の森薗政崇主催の高校生強化合宿でプレーする東海大菅生高時代の笠井智衆(写真左)・髙橋天馬/撮影:ラリーズ編集部
去年は残念な形でしたが、それに追いつけ追い越せと頑張ってきて今回インターハイでベスト16まで勝ち上がれた。先輩が流れを作ってくれた面は大いにあったと思います。
「今回の強い菅生を見られて僕は満足してます」と。
その言葉は心に残りましたね。去年出られなかった子たちが今回の活躍を喜んでくれたのは、とても嬉しく思いました。
「本当に嬉しかったですね…」
今回のインターハイでの生徒たちの頑張りを見て、特に印象に残っていることはありますか?
チームの中でもキャプテンとして私と選手の間で、彼なりにいろいろと頑張ってくれて、良い方向に持っていってくれた。竹中の力が今回のベスト16入りに大きく貢献したと思っています。
写真:インターハイでの竹中流生(東海大菅生高)/撮影:ラリーズ編集部
竹中主将「精神的な部分で強くなれた」
後藤監督絶賛の3年生主将・竹中流生(東海大菅生高)に、東海大菅生高校で成長した部分を尋ねた。
写真:竹中流生(東海大菅生高校)/撮影:槌谷昭人
東海大菅生に入って、ご自身で成長したと感じている部分はどこですか?
そこに関しては一個上の先輩方、特に(髙橋)天馬さんや(笠井)智衆さんに練習相手を良くしてもらっていたので、本当に感謝しています。
写真:竹中流生(東海大菅生高校)/撮影:槌谷昭人
後藤監督の指導についてはどうですか?
精神的な面でも、選手である前に人としてどうあるべきかをよく言われています。
自分の中で一番記憶に残っているのは「卓球以外が疎かになるなら卓球も疎かになってしまう」ということです。それを考えてから自分も変われたと思います。
写真:竹中流生(東海大菅生高校)/撮影:槌谷昭人
スローガンは“多摩から全国へ”
再び後藤監督。チームの特徴や今後の目標について伺った。
写真:アドバイスを送る後藤由一監督(東海大菅生高)/撮影:槌谷昭人
多摩地区中心に23区以外の市町村から来てもらっているところがまず一つの特徴ですね。
野球部の室内練習場の一角で練習している東海大菅生高卓球部
ただ、創設当初から「多摩から全国へ」という言葉を掲げてずっとやってきて、中学時代に全国大会に出たことがないような選手が入学して頑張って東京都代表になるケースが非常に多いです。
写真:後藤由一監督(東海大菅生高)/撮影:槌谷昭人
そういう形で頑張ってくれた卒業生が非常に多く、そんなチームの姿勢や雰囲気を見て、全中出場経験のある笠井兄弟(智衆・埜衣)は菅生で頑張りたいという決心をしてくれて入学してくれました。
写真:インターハイでの水藤光希(東海大菅生高)/撮影:ラリーズ編集部
例えば、2年生の村野(舜太)はインターハイ団体戦でダブルスで起用し、静岡学園戦でも勝つなど非常に頑張ってくれました。彼の活躍は3年生の前原(椿樹)の存在が大きかったと思っています。
写真:笠井埜衣(写真左)・村野舜太(東海大菅生高校)/撮影:槌谷昭人
写真:前原椿樹(東海大菅生高)/撮影:ラリーズ編集部
良い成績を残した今年のチームを受け継ぎ、新チームではどういう目標でやっていきますか?
次、まずは全国選抜出場を目指して、全国選抜で1回2回と勝って、またベスト8に挑戦できる状態を作りたいというのは選手も私も思っているところですね。
写真:東海大菅生高校卓球部の練習/撮影:槌谷昭人
先輩たちが築き上げてきたものは、目に見えなくとも着実に受け継がれていく。それが部活動の良さでもある。東海大菅生高校卓球部の今回の躍進は、部活動の醍醐味が詰まったものだった。