「結果+α」リコー卓球部・工藤監督が求める"企業スポーツ精神" | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:リコー 卓球部監督 工藤一寛氏/提供:工藤一寛

卓球×インタビュー 「結果+α」リコー卓球部・工藤監督が求める“企業スポーツ精神”

2020.09.18 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

1976年生まれ、今年44歳になる工藤監督の世代は、指導者層の世代交代の進む卓球界で、充実の世代にあたる。

同学年に、男子日本代表の倉嶋洋介監督、日本ペイントマレッツの三原孝博監督、埼工大の兼吉道策監督、女子ではデンソーの西條かおり監督。一つ上に四天王寺の村田充史監督。二つ上には、愛工大の鬼頭明監督、愛工大名電の今枝一郎監督、野田学園の橋津監督、一つ下の学年には、希望が丘の石田真太郎監督など、現在の卓球界を支える指導者たちが揃う。

自身のリコー卓球部選手時代も届かなかった日本リーグ総合初優勝を、2018シーズンに監督として成し遂げた工藤一寛監督。

「いや、本当に選手が頑張ってくれました」。

オンラインでも伝わる物腰の柔かさ。選手たちのこと、そして企業スポーツへの思いを語ってくれた。


写真:試合会場で工藤一寛監督(リコー)/提供:リオさん

>>山下社長「卓球を卒業してもいい仕事をする」リコーが企業スポーツを持つ理由

リコー躍進の2018年

――2018年は、リコー卓球部にとって躍進の年でしたね
工藤一寛監督(以下、工藤)
:2年前の話で大変恐縮です。リコー卓球部創部60年目の日本リーグ初優勝、私は監督5年目でした。

最初はうまくいかなくて、監督就任すぐに2部に落ちた。全日本ランカーの瀬山、そして桑原、高岡、松生と良いメンバーが揃っていたのに。監督のせいで負けてるとか、いい選手いるのに監督が生かせてないとか、そういう話も耳に入ってきてました。いろんな方にアドバイス頂いたり、会社の中でも体制を変えてみたり、自分でも色々試行錯誤しながら、あそこにたどり着きました。


写真:初優勝を決めてベンチでチームメイトと抱き合う鹿屋良平/撮影:ラリーズ編集部

――創部60年目の初優勝は、感慨深いですね
工藤
:2018年に優勝したメンバーは、ちょうど私が監督になってから入った6人なんです。監督一年目、最初に入ってきたのが松生(直明)でした。2018年はその松生がキャプテンで、出る機会は少なかったですが本当にチームをよくまとめてくれました。

6人とも私が責任を持って接して、選手は仕事と卓球を頑張ってきて、初優勝はその集大成という感じがして、こみ上げるものがありました。本当に選手たちのおかげです。


写真:リコー卓球部 工藤一寛監督/撮影:ラリーズ編集部

ファイナル4の決勝は、エースの有延(大夢)が負けたのに優勝した。適材適所でした。2番で山本(勝也)が勝って、ラストで鹿屋(良平)が勝って。試合に出てない宮本(幸典)も一生懸命応援してくれて、みんなが一つになった。


写真:2018年ファイナル4での山本勝也(リコー)/撮影:ラリーズ編集部

――あの年は、全日本団体でも優勝しました
工藤
:一回ならまぐれって言われるかもしれませんが(笑)、あの年は3回優勝しましたから。日本リーグ前期、ファイナル4、そして全日本団体。この年に限っては、まぐれじゃないと思いますよ(笑)


写真:2018年ファイナル4での鹿屋良平(写真左)と有延大夢(写真右)/撮影:ラリーズ編集部

ただ、優勝した翌年の2019年は、日本リーグでは前期7位、全日本実業団では準優勝しましたけど、ファイナル4にも出れなかった。選手に慢心はなかったと思いますが、監督の私に隙があったと反省しています。

今年もう1回頑張ろうというタイミングで、このコロナの状況にはなっていますけど、もう一度誰もが認める優勝をしたいなと思っています。

上位チームが一本目から全力で来る

――周囲の見る目も変わってきましたか
工藤
:リコーはそれまで7位や8位が当たり前のチームでした。上位チームと対戦すると、相手がリコーは楽勝だと思ってるのを感じるんですね。

でも今は、東京アートさんだったり協和キリンさんだったりシチズン時計さんが、リコーをライバルの一つと考えてるんじゃないかと試合のたびに感じます。


写真:2020年全日本での池田忠功・宮本幸典(リコー)/撮影:ラリーズ編集部

1戦目の一本目からあっちも全力で来るっていうのが、やっぱりすごく嬉しくて。選手も感じているはずですし、やりがいを感じていると思います。

あと、2018年初優勝以降、ラリーズさん始めメディアの皆さんも大きく扱ってくれるようになったのも、実感があります。認知度が広がっていると感じます。

――その2017年に入社した有延大夢選手の加入も大きいですか
工藤
:有延は、今まで明治大学で実績は残してたものの、同期に丹羽(孝希)、町(飛鳥)がいて、下には森薗(政崇)もいて、レギュラーで出られなかった試合があった。


写真:2020年全日本での有延大夢/撮影:ラリーズ編集部

卓球も仕事もやりたいとリコーに入って、1年目から単複で出て(2017年日本リーグ単複合わせて15勝と)大活躍してくれた。会社に入ってすごく成績が出て、もっと卓球をやりたい気持ちが出たと思います。


写真:2018年ファイナル4での有延大夢/撮影:ラリーズ編集部

――有延選手は、Tリーグ琉球アスティーダに参戦している。リコー卓球部としては珍しいケースですよね
工藤
:いろんな活動がしたいという本人の希望もあり、オファーも頂いたので、有延の頑張った結果に応じてやりたいという思いもあって、会社に掛け合いました。

琉球アスティーダからTリーグに出場、ポーランドリーグに参戦、ナショナルチームの1~2週間の合宿に行くのも、リコーでは初めてのケースでした。

有延は他の選手に比べ、多くの日数を卓球の活動に充てていますが、会社も私も理解した上での活動です。

有延に期待すること

――有延選手は「アイツがいて良かったなと評価されるような行動をしていきたい」と意気込みを語っています
工藤
:彼が結果を出してくれて、それがリコーの活躍に繋がっています。有延の活躍なくして近年の団体戦の成績はなかったでしょう。3年間で日本リーグのシングルス、ダブルス合計49勝していますから。チームの見本になるような努力もしています。

その上で、厳しい言い方になっちゃいますけど、これから日の丸をつけたり、全日本選手権で表彰台に立てるようになるには、もう一歩、何かが必要なのかもしれません。本人もわかっていると思います。今のまま努力を続けていけば、もう1ステップ上にいけると私は信じています。

企業スポーツは社員の活性化、社会貢献、広告宣伝という目的でやっています。ただ勝って結果を出してればいいものではない。会社に活動させてもらっている。それに対する感謝の気持ちや謙虚な気持ちが必要です。

入社当時は少し視野が狭い部分がありましたが、入社4年目の今は気配り、配慮ができ、後輩への指導、気遣いもできる。嬉しいですね。


写真:2020年全日本選手権での鹿屋良平(ペア・有延大夢)/撮影:ラリーズ編集部

これはちょっと余談で他チームの選手の話なんですが、私が現地にいた2019年12月のUSオープンで、御内(健太郎/シチズン時計)くんがシングルスで優勝したんです。御内くんが優勝インタビューを受けた時に、一番最初に「ありがとうございます」と言った後、「朝早くから練習してくれた船本くん、本当にありがとう」と言ったんです。


写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

御内君と同部屋だった日野自動車キングフィッシャーズの船本(将志)くんが朝早くから練習してくれてたんですね、御内くんと。そういう言葉が自然に出るのは、彼は普段から練習相手、会社、日本リーグに感謝してるからだと思うんです。

優勝インタビューは、今日どうやって勝ったとか、賞金をどう使うとかを言いたいはず。でも、最初に感謝の言葉が出るのは御内くんの素晴らしいところだし、企業スポーツの精神やスポーツ選手としての考えがしっかりしていると感じました。


写真:2020年全日本での有延大夢/撮影:ラリーズ編集部

――実業団の監督としての思いですね
工藤
:実業団の監督は、選手がみんなトップだから、やることないでしょうと言われることが結構多いんですけど(笑)。そんなことなくて。

監督自身、会社の仕事もありますし、マネージャーみたいな仕事も多い。いろんな申請をしたり経費の処理をしたり、僕自身マネージャーとか球拾いかなって思うこともよくあります(笑)。


写真:工藤一寛監督(写真中央)/提供:日本卓球リーグ実業団連盟

――でも、全選手にオンラインインタビューする中で「監督に喝を入れてもらって立ち直った」という声もありました
工藤
:それは宮本ですね?(笑)彼とは色々話しましたから。

うちは「仕事と卓球の両立」を掲げているので、そのバランスで選手は苦労するときがあるんです。時には“両立なんだから、仕事をやんなきゃ”となって、卓球がおろそかになることもある。

そういう選手の部署の上司に聞くとすごく仕事頑張ってると聞く。仕事に取り組みたい選手の気持ちもよくわかる。でも、やっぱりスポーツ採用で入社してるんだから、絶対にスポーツも頑張らないといけない。


写真:リコー卓球部 工藤一寛監督/撮影:ラリーズ編集部

選手の「なぜ僕でなくて彼なんですか」に答える

工藤:誰かを試合に出すと、誰かが出られなくなる。会社からは「基本的に部員は6名」と言われています。誰かが入ってくると、誰かが引退する。実業団もそんなに甘くないんです。

選手は監督に「なぜ僕でなくて彼なんですか」と説明を求めますから、僕はちゃんと答えられなくてはいけない。

周囲も納得する日々の取り組みと姿勢を、選手には求めています。

――まだ次の大会が見えない時期が続きますが
工藤
:ただ、これは日本中が同じ状況なので。今ある環境の中で、選手が前向きな状態で「仕事と卓球」に取り組めるようにフォローしていきたいと思ってますし、うちの選手ならそうできると思っています。

――ありがとうございました。

優しい言葉のなかに厳しさがあり、厳しさのなかに選手と企業スポーツの今後を思う熱があった。

ほとんどの取材がオンラインだったにも関わらず、リコー卓球部のインタビューは社長・監督・全選手から受ける印象は、その風通しの良さだ。

そして、この記事の編集中に、11月「2020年度後期日本卓球リーグ熊本大会」の開催が発表された。

「仕事と卓球の両立」を貫く男たちの挑戦が、再び始まる。

リコー卓球部特集


写真:リコー卓球部/撮影:ラリーズ編集部

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