取材・文:古山貴大
平成の31年間の卓球史を振り返る、『平成の卓球』。
前編では、現Tリーグチェアマンの松下浩二さん他、今の卓球界の重鎮たちが現役で活躍していた平成前期、ルール改正や水谷隼選手・福原愛さんの台頭など変化に富んだ平成中期(平成11年〜20年頃)までを振り返った。
そして迎えた平成後期。ここから日本の卓球界は右肩上がりに躍進する。
後編の今回も、引き続き『Rallys』編集長の川嶋が、平成後期の印象的な出来事を振り返りつつ、『令和』時代に活躍が期待される選手についても語る。 (インタビュアー:古山貴大)
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オリンピックで初のメダル獲得【平成後期】
――平成後期で印象的だった出来事を教えてください。
「まず、ロンドンオリンピック(平成24年)の女子団体で、平野早矢香さん・福原愛さん・石川佳純選手の3人が銀メダルを獲得したことです。日本卓球史上はじめての五輪でのメダルで、歴史を変えた瞬間のひとつだと思います。
メダルを獲得したことで、卓球がメディアに取り上げられる機会が一気に増えました。あとは平成28年(2016年)のリオオリンピックで、水谷隼選手がシングルスで初の銅メダルを獲得したことも大きな出来事ですね。」
写真:水谷隼/撮影:AP/アフロ
――大躍進ですね。
「先に女子がブレイク。そのあとに男子も『負けてたまるか』という感じで躍進していきましたね(笑)。 リオオリンピックで男子団体が中国と試合したとき、水谷選手が許昕(シュシン)選手に勝ったのもとても印象に残っています。
テレビで、ダイナミックな卓球のラリーが『神ラリー』と評されて話題になったのも、この頃から。そうやって卓球界が盛り上がったことで、『東京オリンピックやその先の卓球界をもっと盛り上げたい』と思い、僕もRallysを作りましたから」
世界卓球が日本で開催されたことも
「世界卓球選手権大会でも、平成後期はたくさんの日本人選手が活躍しました。
まず挙げたいのが岸川聖也選手。岸川選手は、北京オリンピック、ロンドンオリンピックの日本代表選手です。
岸川選手と水谷選手がダブルスで銅メダルを12年ぶりに獲得して盛り上がった2009年(平成21年)の世界卓球横浜大会は、卓球ファンにとっては記憶に新しいところではないでしょうか」
写真:岸川聖也(左)と水谷隼/提供:YUTAKA・アフロスポーツ>>岸川聖也「経験で取れる1点がある」歴戦の猛者が語る「Tでの戦い方」
中国トップ選手との名勝負
「あと外せないのが『マツケン』こと松平健太選手。2009年の同横浜大会では、中国の馬琳選手と白熱した試合を繰り広げました。馬琳選手は北京オリンピックの金メダリスト、当時の世界トップ選手です。
日本で開催された世界卓球で金メダリストに肉迫したその姿は、印象に残った人も多いと思います。
ちなみにこの二人、2013年(平成25年)のパリ大会で再戦するんです。因縁の対決と言われたこの一戦、松平選手が4-1で勝利し、とても盛り上がりました」
写真:松平健太/提供:Enrico Calderoni・アフロスポーツ――大金星ですね。
単複の両方で飛躍的成長
「平成後期になってからの躍進ぶりは本当にすごかったです。
世界卓球のメダルの数も、2013年は1個だったのが2015年は2個、そして2017年ドイツ大会では5個に躍進。ミックスダブルスでの吉村・石川ペアの金メダル、平野美宇選手の女子シングルスでの銅メダルなど、歴史的な世界選手権になりました。
写真:平野美宇/撮影:ラリーズ編集部シングルスとダブルスどちらもメダルを取ったことで、『日本の卓球が強くなった』と世界に示せたのではないでしょうか。
直近の世界卓球2019ブダペスト大会でも、ダブルスで3つのメダルを獲得。シングルスでは丹羽孝希、平野美宇、加藤美優の3選手がベスト8に入りました。」
――まさに右肩上がりですね。
『卓球女子黄金世代』の台頭
――ほかに印象的な大会や出来事はありますか?
「全日本卓球選手権だと、水谷選手が10度優勝しています。ほかにも張本智和選手が最年少優勝したり、伊藤美誠選手が史上初の2年連続3冠を獲ったり、若い人がどんどん出てきています。
伊藤選手や平野選手、早田ひな選手が同い年で『卓球女子黄金世代』と言われていますよね。
写真:左から早田ひな・伊藤美誠・平野美宇(2016 ITTFアワード)/提供:ITTF・アフロ
男子の方も、張本選手に次ぐ若手選手にもっと国際大会で暴れて欲しいと思います。水谷選手も『張本が3人いないと引退できない』と言っていましたし(笑)」
――世界的に見ても、平成後期で日本はだいぶ強くなったと。
「平成後期になってからは、世界から見てもトップクラスの位置についたといえると思います。
平成前期は中国とヨーロッパが強かった印象がありますが、中期になってから韓国や台湾含めてアジア勢が躍進し始めました。後期では日本が強くなって、ドイツがちょっと復活してきましたね。
日本の卓球が強くなったことで、子供に習わせたいスポーツとしても、ロンドンオリンピック以降卓球が上位に来ているそうですよ」
>>早田ひなインタビュー “黄金世代”から見た「今、日本の卓球が強いワケ」
平成後期のビッグイベント、Tリーグ開幕
――選手や試合以外で、印象に残っている出来事はありますか。
「実は平成後期に入ってからもルール改正が行われています。平成26年(2014年)にボールの材質がセルロイドからプラスチックボールに変わりました。プラスチックのほうが、供給量が安定し、気圧などの変化にも強く安全だということで。
プラスチックボールになってから、より回転がかかりにくいこともあり、ラリーがさらに続きやすくなりました。
あと忘れてはいけないのが、昨年10月の『Tリーグ』開幕。国内に世界最高峰の卓球リーグができたことで、日本選手が世界の強豪と沢山試合ができるようになった。今夏に始まる予定の第二シーズンにも期待です。
写真:Tリーグ開幕/撮影:ラリーズ編集部
エンターテイメントの面でも、映画『ミックス。』が2017年の10月に放映されたり、複合型卓球カルチャースペース『T4 TOKYO』が渋谷にオープンしたり。
YouTubeやバラエティ番組で卓球が話題になることも増えました。また卓球人口も増えています」
>>水谷が語るTリーグ「両国国技館は期待以上」 本場の卓球との違いとは
平成から『令和』へ、新時代に期待したいニューフェイス
――いよいよ平成も終わり、令和時代へ突入します。若い人がどんどん出てきていますが、期待したい選手はいますか?
「まずは14歳の木原美悠選手に注目したいですね。今年の全日本卓球選手権で史上最年少で準優勝しています。
張本美和選手と松島輝空選手も期待のホープ。張本選手はホカバ(全日本卓球選手権のホープス・カブ・バンビの部)で優勝していますし、松島選手も現在5連覇しています。
令和時代は、今活躍している選手もますます強くなることと思います。『令和時代に日本が中国に勝って世界のトップに立つ瞬間が見たい』。これが全ての卓球ファンの願いだと思います。」
――令和時代には日本卓球界がどう進化していくのか、ますます楽しみですね!