文:ラリーズ編集部
卓球国内リーグ・ノジマTリーグで3シーズン「岡山リベッツ」に所属し、キャプテンとしてチームを率い、4季目からはT.T彩たまに移籍した上田仁を紹介します。生い立ち、プレースタイル、使用用具、世界ランキングなどの基本的な情報から、26歳でのプロへの挑戦までの特徴的な学生時代・実業団所属時代についても触れます。
国内のみならず、国際大会でも活躍している上田仁のプロフィールを見ていきましょう。
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このページの目次
上田仁とは?
上田仁は、若手の台頭が目立つ日本の卓球界において、26歳でプロ転向という異色のキャリアを持つ選手です。全日本社会人選手権で3年連続優勝などの国内での実績に加え、2018年のチームワールドカップで団体準優勝に大きく貢献するなど、国際大会でも多くの実績を残しています。
また、岡山リベッツの選手としてTリーグの1stシーズン3rdシーズンまでプレーし、4thシーズンからはT.T彩たまに移籍することが発表されました。
上田仁のプロフィール
上田仁は1991年12月10日生まれの28歳(2022年12月時点)で、京都府舞鶴市出身です。
4人兄弟の末っ子で、聴覚障害を患っていた兄と姉がコミュニケーションの一環として卓球をしていた影響で3歳で卓球を始めます。姉の南方(旧姓:上田)萌は後に、デフリンピックで金メダルを獲得しています。
写真:上田仁/撮影:ラリーズ編集部
上田は小学生時代に目立った活躍はありませんでしたが、中学時代、同世代のトップクラスの選手として活躍していた松平健太との接戦が青森山田中学校の監督の目にとまり、松平健太と同じく青森山田中学校に入学しました。そして、入部から2年で松平と並び、「青森山田の2枚看板」と呼ばれるほどの存在感を表します。
青森山田入学後は卓球漬けの日々を送り、中学1年生の時、全日本学生選手権カデットの部でベスト4に入る活躍を見せました。しかし自身「勝ち慣れていなかった」という当時は、初めての入賞を機に強いプレッシャーを感じ始め、その重圧から2年の頃には「辞めたい、帰りたい」と漏らしていたそうです。そんな上田仁でしたが、中学3年の時、ジュニアの国際大会メンバーに選ばれ、海外での試合による分析や経験を積み重ねたことをきっかけに自信が芽生えます。
高校卒業後、青森大学に進学し、卒業後は協和キリン(当時・協和発酵キリン)に就職し、実業団・協和キリンに所属します。
2015年から2017年にかけて全日本社会人選手権3連覇を成し遂げます。また、2017年にはワールドツアーでシングルス1回、ダブルス5回優勝という素晴らしい成績を残しています。
写真:上田仁/提供:アフロ
2018年2月にロンドンで行われたチームワールドカップにおいて、準決勝の韓国戦で大逆転勝利に貢献し、銀メダルに輝きました。帰国後協和発酵キリンを退社し、プロ転向を発表します。
2018年6月には同年10月からスタートするTリーグへの参加を表明している岡山リベッツに加入しました。初シーズンで岡山リベッツは惜しくも優勝を逃し、2位でシーズンを終えます。個人としては、チームメイトであり同じく勝率7割を超える森薗政崇とのダブルスにおいて岡山の最強ペアと称される強固なダブルスで15勝を挙げ、その年のノジマTリーグベストペア賞に輝きました。
2019年からのTリーグ2ndシーズンでは、岡山リベッツのキャプテンを務めるも体調不良により休養。3rdシーズンは復帰し、シングルス3勝5敗、ダブルス7勝7敗の成績を残しました。
写真:岡山リベッツから加入した上田仁(写真左)と丹羽孝希/撮影:ラリーズ編集部
2021年の4季目からはT.T彩たまに移籍し、シングルス2勝3敗、ダブルス3勝8敗の成績を残しました。
2022年には全日本選手権男子シングルスでベスト8入りを果たし、2014年大会以来8年ぶりの8強入りを果たします。そして、同年の全日本社会人選手権ではV5を目指しますが、大島祐哉(木下グループ)に惜しくも敗れ銃優勝に終わってしまい、「全日本社会人不敗伝説」は崩れてしまいます。
上田仁のSNS
上田仁のプレースタイル
上田仁の戦型は、右シェーク裏裏のドライブ型で、ピッチの速い両ハンドや巧みな台上技術を武器に試合を進めます。その中でもレシーブの引き出しの多さとカウンタードライブのうまさは国内トップクラスです。様々な技術を使い分ける器用さがあり、ペアが変わっても結果を残せるダブルスの名手としても知られます。
上田仁の使用用具
上田仁はバタフライの契約選手で、用具は全てバタフライの製品を使用しています。ラケットはZLカーボンを搭載した特注ラケットで、ラバーはフォアとバック両面に「ディグニクス09C」を使用しているようです。
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上田仁の世界ランキング
上田仁の世界ランキングは2016年7月時点では112位だったものの、2017年7月には順位を45位まで上げ、たった1年で、ランキングを約60位上昇させました。2018年3月にキャリア最高の23位にランクインしました。2022年12月時点では、世界ランキングを持っていません。
上田仁の国内大会での主な実績
2007年 | 全日本選手権 | ジュニア男子シングルス:優勝 |
2008年 | 全日本選手権 | ジュニア男子シングルス:優勝 |
インターハイ | 男子シングルス:準優勝 | |
2009年 | インターハイ | 男子ダブルス:優勝 |
2010年 | 全日本学生選抜 | 男子シングルス:優勝 |
2012年 | 全日学 | 男子シングルス:優勝 |
2014年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト4 |
2015年 | 日本卓球リーグ・ビッグトーナメント | 準優勝 |
全日本社会人選手権 | 男子シングルス:優勝、男子ダブルス:優勝 | |
2016年 | 全日本社会人選手権 | 男子シングルス:優勝、男子ダブルス:優勝 |
2017年 | ジャパントップ12 | 男子シングルス:優勝 |
シチズンカップ日本卓球リーグ選手権 | 男子シングルス:準優勝、男子ダブルス:優勝 | |
全日本社会人選手権 | 男子シングルス:優勝 | |
全日本選手権 | 男子ダブルス:優勝 | |
2018年 | 全日本選手権 | 男子ダブルス:準優勝 |
2022年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト8 |
全日本社会人選手権 | 男子シングルス:準優勝 |
上田仁の国際大会での主な戦績
2007年 | 世界ジュニア選手権 | 男子ダブルス:準優勝 |
2009年 | ITTFジュニアサーキットファイナル | 男子シングルス:優勝 |
2013年 | ジャパンオープン | 男子ダブルス:優勝 |
2017年 | タイオープン | 男子シングルス:優勝、男子ダブルス:優勝 |
中国オープン | 男子ダブルス:優勝 | |
ブルガリアオープン | 男子ダブルス:優勝 | |
チェコオープン | 男子ダブルス:優勝 | |
オーストラリアオープン | 男子ダブルス:優勝 | |
グランドファイナル | 男子ダブルス:3位 | |
2018年 | チームワールドカップ | 男子団体:準優勝 |
まとめ
インタビューなどでは自身を天才ではないと語る上田仁。しかし安定を求めて加入した実業団でのキャリアを閉じ、卓球人生を懸けたいと決意した26歳での決して早くないプロへの転向。Tリーグ1stシーズンで結果を残し、プロ転向は不正解では無かったことを証明しました。上田仁の挑戦に今後も目が離せません。
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写真:上田仁(T.T彩たま)/撮影:田口沙織
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