文:ラリーズ編集部
今回は、2012年の全日本選手権決勝で当時5連覇中の水谷隼を破り優勝、リオ五輪では団体戦メンバーとして活躍し、日本男子卓球界史上初の銀メダル獲得に貢献した吉村真晴を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、国際大会での戦績についても触れていきます。
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このページの目次
吉村真晴とは?
吉村真晴は、現在Tリーグの琉球アスティーダでプレーしており、国内外の大会に出場する国内トップレベルの卓球選手です。近年はバラエティー番組にも出演するなど、タレントとしても活動しています。
2019年のチームワールドカップでは、準々決勝のドイツ戦で“皇帝”ティモ・ボルに勝利し、日本チームを銅メダルへと導きました。
また、石川佳純と組むミックスダブルスでは、世界選手権で、2015年銀、2017年金、2019年銀と3大会連続でメダルを獲得しており、ダブルスの名手としても知られています。
吉村真晴のプロフィール
吉村真晴(よしむらまはる)は1993年8月3日生まれの31歳(2024年11月現在)で、茨城県東海村出身です。父親が元卓球選手で母親はフィリピン人のハーフとしても知られており、3歳下の弟の和弘も日本代表に選出された経験を持つトップ選手です。
写真:吉村和弘/撮影:ラリーズ編集部
小学1年生から地元の東海クラブで卓球を始めた吉村は、幼少期より頭角を表します。全日本選手権カブの部優勝、ホープスの部準優勝など、全国大会で素晴らしい成績を収めました。
小学校卒業後は、ロンドン五輪日本代表の岸川聖也さんを育てた橋津文彦監督に誘われて仙台の秀光中学に進学します。そして、中学3年の夏に橋津監督とともに山口の野田学園中に転校し、高校も野田学園高校に進学します。
高校3年間ではインターハイ学校対抗とシングルスのタイトルは逃したものの、2年時のインターハイでは平野友樹(協和キリン)とのペアで優勝を飾りました。また、世界ジュニア選手権で3位、アジアジュニア選手権で優勝を果たし、輝かしい国際大会デビューを飾ります。
写真:2012全日本で水谷隼の6連覇を阻止した吉村真晴/提供:アフロスポーツ
そして、吉村の存在を大きく知らしめることになったのが、高校3年で臨んだ2012年全日本選手権です。前年の2011年大会はベスト32で敗退となっていた男子シングルスで快進撃を見せて、自身初の決勝進出。決勝戦では当時大会5連覇中だった水谷隼さんをゲームカウント3-3の7-10からの大逆転勝利で下し、史上2人目となる高校生での全日本王者に輝きました。
愛知工業大学に進学後は、大学2年生の時にドイツのブンデスリーグに挑戦し腕を磨くなど世界を虎視眈眈と見据え、2015年のスペインオープンを制し、再びの大ブレイクを果たします。その年の世界選手権ではミックスダブルスで日本で38年ぶりとなる銀メダルを獲得し、世界の強豪が集うジャパンオープンでは準優勝を果たし、世界ランキングを急上昇させリオ五輪の3番目の代表の座を獲得しました。
写真:リオ五輪団体銀メダルを獲得した水谷隼、丹羽孝希、吉村真晴/撮影:ロイター/アフロ
リオ五輪では、準々決勝で中国香港の黄鎮廷(ウォンチュンティン)を撃破し、準決勝では丹羽孝希と組むダブルスでドイツのティモ・ボル/バスティアン・シュテガーを下すなどの活躍を見せ、日本男子初となる銀メダル獲得に貢献しました。
写真:石川佳純と吉村真晴/提供:ittfworld
2017年の世界選手権では、丹羽と組んだ男子ダブルスで銅メダル、石川と組んだミックスダブルスで金メダルに輝きました。日本勢の世界選手権金メダル獲得は、1969年大会以来となる48年ぶりの快挙となりました。
2017/18シーズンはロシアのUMMCリーグでプレーし、2019年の世界選手権では張本智和の怪我により急遽石川とのミックスダブルスに出場。決勝で2度の背面打ちを決めるなど観客を沸かせ、3大会連続のメダルとなる銀メダルを獲得しました。
写真:吉村真晴(琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部
Tリーグの1stシーズンではT.T.彩たまのキャプテンを務め、現在はTリーグの琉球アスティーダでプレーしています。3rdシーズン、5thシーズンではプレーオフファイナルで勝利を挙げ、チームの優勝に貢献しました。
2019年以降は新型コロナウイルスの世界的な流行やワールドツアーのシステム変更もあり、国際大会からは距離を置いていた吉村でしたが、2022年よりパリ五輪出場を目指して国際大会へ復帰を果たします。さらにパリ五輪代表の国内選考会であるTOP32でも安定して好成績を残し、5月に開催されたアジア競技大会の日本代表選考会では優勝を飾ります。
さらに、2023年1月に開催された世界選手権アジア大陸予選では、東京五輪金メダリストで当時世界ランキング2位の馬龍(マロン・中国)を破って代表権を獲得。同年4月には4年ぶりにNTに復帰し、9月に開催されたWTTフィーダーバンコクでは2015年のクロアチアオープン以来となる国際大会シングルス優勝を果たしました。
吉村真晴のSNS
WTT FEEDER BANGKOK
Champion🏆
アジア競技大会に向けて充実した大会にできました。
ダブルスパートナー、ベンチ、練習相手とサポートしてくれた横谷。
ありがとう。
遅くまで応援してくれていたファンの皆さん、ありがとございます!… pic.twitter.com/hCMrEQxviD— 吉村真晴Maharu Yoshimura (@0803_maharu) September 9, 2023
吉村真晴のプレースタイル
吉村真晴の戦型は、「右シェーク裏裏ドライブ型」です。一発の威力に優れるドライブを武器に、前中陣での両ハンドラリーを得意とし、また後陣に下がってもロビングで粘り反撃ができる、オールラウンドプレイヤーです。
2012年の全日本選手権では、解説の宮崎義仁氏に「今までの日本人には持ってないような威力」と言わしめた強烈なバックドライブ、そして左利きのフォアに逃げていくシュートドライブを操り水谷の堅陣を打ち砕きました。
また、2015年のジャパンオープンでは、より安定性、鋭さを増した両ハンドドライブと、アップダウンサーブを武器に勝ち進み、決勝ではその魔球で中国の許昕(シュシン)から何本もサービスエースを奪いました。
さらに、アップダウンサーブからだけではなく、順系のサーブから組み立て、両ハンドで攻め切る展開も多く見せており、プレーの幅も年々広がっています。
また、サーブのコースが限定されるため基本的にはレシーブ側有利のダブルスにおいても、吉村のアップダウンサーブはよく効きます。どこからでも打てる両ハンドドライブ、さらにはバックの二段モーションフリック、チキータ、ストップなど多彩なレシーブ技術も加わり、ダブルスのスペシャリストとして、世界選手権混合ダブルス3大会連続メダル獲得を果たしました。
吉村真晴の使用用具
バタフライの契約選手である吉村真晴は、ラケットはバタフライの特注ラケット(ZLカーボンシェーク、インナーファイバー使用)、ラバーはフォア面にバタフライの『ディグニクス05』、バック面にバタフライの『ディグニクス09C』を使用しているようです。
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吉村真晴の世界ランキング
吉村真晴の世界ランキングは41位(2024年11月時点)で、最高ランキングは15位(2016年5月)です。
吉村真晴は、2014年の1月に132位、1年後の2015年1月には57位、さらに2015年7月には20位と一気に世界ランクを上昇させました。2016年5月には自身最高の15位を記録し、その後もコンスタントに10位代〜30位代を保っていました。
吉村真晴の国内大会での主な成績
2009年 | インターハイ | 男子シングルス:ベスト16 |
2010年 | インターハイ | 男子シングルス:ベスト8、男子ダブルス:優勝(ペア:平野友樹)、男子学校対抗:準優勝 |
2011年 | 全日本選手権 | ジュニア男子シングルス:3位 |
インターハイ | 男子シングルス:3位、男子ダブルス:優勝(ペア:有延大夢)、男子学校対抗:準優勝 | |
2012年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:優勝、混合ダブルス:3位(ペア:石川佳純) |
全日学 | 男子シングルス:準優勝、男子ダブルス:優勝(ペア:森本耕平) | |
全日学選抜 | 男子シングルス:優勝 | |
2013年 | 全日本選手権 | 混合ダブルス:準優勝(ペア:石川佳純) |
インカレ | 男子団体:優勝 | |
2014年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト8、混合ダブルス:準優勝(ペア:石川佳純) |
全日学 | 男子ダブルス:準優勝(ペア:藤村友也) | |
インカレ | 男子団体:準優勝 | |
2015年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト8、混合ダブルス:優勝(ペア:石川佳純) |
インカレ | 男子団体:優勝 | |
2016年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:3位 |
2017年 | 全日本選手権 | 混合ダブルス:準優勝(ペア:石川佳純) |
2018年 | 全日本選手権 | 混合ダブルス:3位(ペア:石川佳純) |
2019年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト8 |
2020年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:ベスト8 |
2022年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:3位、混合ダブルス:準優勝(ペア:鈴木李茄) |
NOJIMA CUP | 男子シングルス:準優勝 | |
2024年 | 全日本選手権 | 男子シングルス:3位 |
吉村真晴の国際大会での主な成績
2011年 | 世界ジュニア選手権 | 男子シングルス:銅メダル、男子ダブルス:銅メダル(ペア:丹羽孝希)、男子団体:銀メダル |
アジアジュニア選手権 | 男子シングルス:金メダル、男子ダブルス:銀メダル | |
2012年 | アジアカップ | 男子シングルス:準優勝 |
2013年 | ジャパンオープン | 男子ダブルス:優勝(ペア:上田仁) |
ユニバーシアード | 男子団体:銀メダル | |
2015年 | スペインオープン | 男子シングルス:優勝 |
世界選手権蘇州大会 | 混合ダブルス:銀メダル(ペア:石川佳純) | |
クロアチアオープン | 男子シングルス:優勝 | |
ジャパンオープン | 男子シングルス:準優勝 | |
チェコオープン | 男子シングルス:準優勝 | |
アジア選手権 | 男子ダブルス:銅メダル(ペア:丹羽孝希)、男子団体:銀メダル | |
2016年 | 世界選手権クアラルンプール大会 | 男子団体:銀メダル |
カタールオープン | 男子ダブルス:準優勝(ペア:丹羽孝希) | |
ポーランドオープン | 男子シングルス:ベスト4、男子ダブルス:準優勝(ペア:丹羽孝希) | |
リオデジャネイロ五輪 | 男子団体:銀メダル | |
2017年 | 世界選手権デュッセルドルフ大会 | 男子ダブルス:銅メダル(ペア:丹羽孝希)、混合ダブルス:金メダル(ペア:石川佳純) |
アジア選手権 | 男子ダブルス:銅メダル(ペア:丹羽孝希)、男子団体:銅メダル | |
韓国オープン | 男子シングルス:ベスト4 | |
ジャパンオープン | 男子ダブルス:準優勝(ペア:丹羽孝希) | |
中国オープン | 男子ダブルス:優勝(ペア:上田仁) | |
ブルガリアオープン | 男子ダブルス:優勝(ペア:上田仁) | |
チェコオープン | 男子ダブルス:準優勝(ペア:上田仁) | |
グランドファイナル | 男子ダブルス:3位(ペア:上田仁) | |
2018年 | ジャパンオープン | 混合ダブルス:準優勝(ペア:石川佳純) |
2019年 | 世界選手権ブダペスト大会 | 混合ダブルス:銀メダル(ペア:石川佳純) |
アジア選手権 | 男子ダブルス:銅メダル(ペア:戸上隼輔)、男子団体:銅メダル | |
チームワールドカップ | 男子団体:ベスト4 | |
2022年 | WTTフィーダーオロモウツ | 男子シングルス:準優勝、男子ダブルス:優勝(ペア:吉村和弘) |
2023年 | WTTフィーダーバンコク | 男子シングルス:優勝、男子ダブルス:ベスト4(ペア:横谷晟) |
2024年 | WTTフィーダーハビージョフ | 男子シングルス:優勝 |
まとめ
今回は、リオ五輪銀メダリストで、琉球アスティーダでプレーする吉村真晴選手を紹介しました。元々の破壊力満点の両ハンドドライブに、安定感、ラリー戦での強さなどが加わり、どんどん進化を続けている吉村選手。彼の活躍から今後も目が離せません。