全日本ランカーからTリーグ球団社長まで輩出 "卓球好き"が集い"地元密着"で戦う関西高校 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:関西高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 全日本ランカーからTリーグ球団社長まで輩出 “卓球好き”が集い“地元密着”で戦う関西高校

2021.09.26

この記事を書いた人
Rallys編集長。学生卓球を愛し、主にYouTubeでの企画を担当。京都大学卓球部OB。戦型:右シェーク裏裏

インターハイチャンピオンからTリーグの球団社長まで、様々な卓球人を輩出しているのが岡山県の関西(かんぜい)高校だ。

関西高校は、2003年のインターハイで白神俊佑/唐興賀ペアが男子ダブルス優勝を飾っている。現在、白神氏は現在中央大学卓球部男子の監督を、唐氏はTリーグ・日本生命レッドエルフでコーチを務めている。

また、Tリーグ・岡山リベッツの羽場誠社長も関西高校OBで、地元岡山でTリーグチームを立ち上げた形だ。岡山リベッツの白神宏佑監督も、卓球の試合をライブ配信する株式会社LaboLive代表取締役の雪本修一氏も関西高校OBと、指導者からビジネス面までも卓球界に様々な人材を送り込んでいる。

今回は、岡山まで足を運び、関西高校卓球部を取材した。


【関西高校卓球部】インターハイ学校対抗には14年連続53回の出場、全国高校選抜には11年連続24回の出場を誇る岡山県の卓球強豪校。OBは、Tリーグ岡山リベッツ社長の羽場誠氏、監督の白神宏佑氏、卓球の試合をインターネットでライブ配信する株式会社LaboLive代表取締役の雪本修一氏、中央大学男子卓球部監督の白神俊佑氏、実業団リコーで活躍する郡山北斗ら

“地元密着”の関西高校


写真:柏幸浩監督(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――8月のインターハイお疲れ様でした!

関西高校は、14年連続53回目だったとのことで、歴史がありますね。

柏監督:僕は中央大学卒業後、すぐに教員になって今、卓球部顧問35年目です。

私の前に2人ばかり監督さんがおられましたし、全国高校総体(インターハイ)の出場回数は全国で4番目の記録になっていて、それだけ古い歴史と伝統を卓球部としては持っています。


2021年のインターハイでは男子学校対抗ベスト16に進出

――伝統校でもある関西高校卓球部の特徴を挙げるとすると何でしょうか?
柏監督:寮があるので数名は県外の子も受け入れていますが、基本的には地元の選手を主体にやっております。

特に最近は、関西高校卓球部OBで私の教え子でもある、ねや卓球道場の祢屋康介さんやT.Cマルカワの丸川真一さんが岡山に帰ってきて卓球場を開いて、岡山県は小中学生が強くなりました。その生徒たちが関西高校に進学して来てくれることもあり、地元密着でやっています。


今年のチームを支えた3年生田口義仁(写真左)・島村大観(関西高校)もともに岡山県出身

卓球界を支える“卓球好き”なOBを多数輩出


写真:関西高校卓球部OBの白神宏佑監督(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

――関西高校OBは、祢屋さんや丸川さんだけでなく、岡山リベッツの羽場誠社長、白神宏佑監督、卓球の試合をライブ配信する株式会社LaboLive代表取締役の雪本修一氏、中央大学卓球部男子の白神俊佑監督ら、指導者、コーチ、ビジネスでも卓球界に携わる方が多い印象があります。
柏監督:先ほどの祢屋さんや丸川さんは、地元に帰ってきて卓球場を立てて子供たちの指導をしてます。岡山県のホープスは全国でも優勝しているので、指導者として頑張ってくれているのは非常に嬉しいです。

また、雪本さんや羽場さんらも卓球の普及という面でも活躍してくれているので、非常に嬉しく思っています。


写真:関西高校/撮影:ラリーズ編集部

――どうして多くのOBが卓球に関わり続けられてると思いますか?そういう土壌が関西高校にあるのでしょうか?
柏監督:卒業生で作っている関西クラブというチームもありますし、年代別で全国大会に出て優勝するような枝廣一志さんのような卒業生もいます。年齢を重ねても卓球を続けているようなOBがたくさんいます。

みんな卓球が好きなんでしょうね。

加えて、関西高校に対して母校愛も持ってやってくれていて、ラボライブさんや岡山リベッツさんは、生徒にジャージの支給などもしてくれますし、OBの卓球場から進学してくれる子もたくさんいるので、OBが技術的なこともアドバイスしてくれてます。


写真:LaboLive(雪本社長)、岡山リベッツ(羽場社長)より新入部員にはジャージ、バッグ、練習用Tシャツが寄贈された/提供:関西高校卓球部

柏監督:そういう意味でも、OBの団結力は非常に強いとは思います。

今は無観客試合ですが、例えば県総体の団体戦も多ければ100人ぐらい応援に関係者が来ることもありました。みんな関西愛というか母校愛を持ちながらやってくれているのが嬉しいですね。


写真:2016年の岡山インターハイでは多数のOBや保護者が詰めかけ応援した/提供:関西高校卓球部

――卓球を好きなままでいられるのは、柏監督の指導方針も関係しているのかなと思います。

以前、郡山北斗選手(関西高→専修大→実業団リコー)にインタビューした際、「一回も怒られずに自由にやらせてもらったのが良かった」とおっしゃっていました。

柏監督:郡山の場合は怒ることがないくらい素晴らしい選手だったからです。

人間的にも選手としても素晴らしかったし、技術もリーダーとしての素質も十分あったので、彼に任せておけばいろんなことをやってくれるような選手でした。


関西高校卓球部OBの郡山北斗(リコー)「3年間で1回も監督の柏先生に怒られたことがなくて。卓球も含めて自由にやりたいようにやらせてくれるスタイルだった。高校の環境がバッチリ合いました」。

柏監督:郡山は全国中学校卓球大会にも出ていなかった。でも、最後全日本ジュニア3位になってくれて、今も実業団のリコーさんで現役を続けて、全日本選手権でランキングまで入ってくれた。

私の教え子で全日本シングルスでランク入りは初なので、よく頑張ってくれたなと思っています。


2021年全日本ランク入りを決めて喜びのガッツポーズ

田口主将「柏先生は本当に信頼できる」

ここで3年間柏監督の下でプレーしている主将の田口義仁(関西高校3年)に話を聞いた。


写真:田口義仁(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――柏監督の指導についてはどう感じていますか?
田口義仁:柏先生は選手の後ろについて教えてくださったり、いつも練習場を動き回って見てくれてたりしています。

指導もわかりやすいですし、インターハイ前にはフットワーク練習やダブルスのとき、打球相手をしてもらい、本当に練習になりました。


写真:田口義仁(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――え!?柏監督、練習相手もしてくださるんですね!
田口義仁:練習相手をしてくださるのは本当に助かってますし、先生は用事で抜けるとき以外は、朝から夕方までずっと練習を見てくれるので、とても信頼できます。

試合のとき、先生がベンチに入ってくれると落ち着いてプレーができます。


写真:関西高校卓球部練習の様子/撮影:ラリーズ編集部

島村副将が語る柏監督の良さ

副将の島村大観(関西高校3年)にも監督のことを尋ねた。


写真:島村大観(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――柏監督の指導はどうですか?
島村大観:監督の指導は自分のやりたい課題や練習は何をやってもいいというような感じです。

ただ、試合を通して全体的にダメだったところや改善した方が良いところという大きな課題を提示してくれるので、それを自分でどんどん噛み砕いて練習することができます。


写真:島村大観(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――練習は自由で自分で考えることが多いんですね。
島村大観:僕的にはそれが結構合っていて、自分で噛み砕いた方が自信も付くし、自分で考えたことなので他の人にも伝えられます。そういうところが柏先生の良いと思うところです。


写真:関西高校卓球部練習の様子/撮影:ラリーズ編集部

柏監督「卓球が好きなんだと思います」

再び柏監督。


写真:柏幸浩監督(関西高校)/撮影:ラリーズ編集部

――選手たちに伺うと、監督のことをかなり信頼しているように感じました。

練習を最初から最後まで見る部分など生徒たちは嬉しいでしょうね。

柏監督:当然学校の公務もあって見れないときもあるんですけど、できるだけ最初の体操から最後まで見てやるという気持ちではおります。

どれだけの指導がそこでできるかはわからない。でも、見ておけば「こいつ頑張ってるな」とか「今日は手を抜いてるな」とかは選手の状況がわかりますし、見てて選手に言うのと見ずに言うのは生徒にとっても全く違うので。

――自身でプレーするのとは全然違う監督という仕事のやりがいはどこにありますか?
柏監督:厳しい試合でも選手と一緒に戦術を考えてアドバイスをして、勝ってくれたときは非常に嬉しいですよね。特に全国大会などの厳しい試合の中で、やってきたことが出せて勝てたときには非常に充実感はあります。

ただそれは、試合中に選手ができるできないを考えてアドバイスしないといけないから、やっぱり普段から見ていることが大事なのかなと思います。

――柏監督がそこまで卓球の指導に情熱を持てるのはなぜですか?
柏監督:どうなんでしょう(笑)。

ただ、自分も卓球が好きなんだという気持ちだとは思うんですけどね。好きじゃなかったら教えようと思わない。

卓球が、好きなんだと思います。


写真:関西高校卓球部メンバー/撮影:ラリーズ編集部

取材終了後、学校から岡山駅まで柏監督に車で送迎してもらった。(ありがとうございます。)

その際、「インターハイが何とか開催されて良かった」、「卒業生が所属する大学の学生リーグがなくなるのは仕方がない面もあるが残念だ」など柏監督の教え子のことを思う気持ちがひしひしと伝わってきた。

生徒を第一に思う柏監督の姿勢が、卓球が好きで、何より関西高校卓球部を愛する卒業生を輩出している1つの要因なのだろうなと感じた。

取材動画はこちら

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