【Tリーグ】最先端ビデオ解析でチームを支える池袋晴彦コーチ【日本ペイント取材記事第3弾】 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球インタビュー 【Tリーグ】最先端ビデオ解析でチームを支える池袋晴彦コーチ【日本ペイント取材記事第3弾】

2018.03.19

取材・写真・文:中川正博(Rallys編集部)

開幕が徐々に近づくTリーグ。参加チームの一画である日本ペイントマレッツの選手・コーチへの取材を実施した。果たして選手・コーチはどんな意気込みを語るのか。

取材記事の最終回は、池袋晴彦コーチへインタビュー。映像分析サポートスタッフとして帯同し、リオ五輪卓球男子団体活躍の立役者となった池袋晴彦コーチが目指す場所とは。

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池袋晴彦コーチが日本ペイントにたどり着くまでの軌跡

ー 筑波大学卒業からのキャリアについて教えていただけますか?
大学卒業後は一般企業に就職したのですが、すぐに辞めてしまいました。辞めた後は、特別支援学校の講師や、中学校の保健体育の教員として過ごしていました。時間が経つにつれて、「もう少し勉強をしてみたい」と思いが段々と強くなり、筑波大学の大学院に行くことを決意しました。

ー 大学院時代から代表選手のサポートをされているそうですが、詳しく聞かせてください
大学院に入った年がちょうどロンドンオリンピックが開催される年でした。そこで代表選手をサポートできるプロジェクトを見つけ、手伝わせていただくようになりました。その時は本格的なことはあまりできず、本当にアシスタントというような形でした。

ー 最初から映像分析をしていた訳ではなかったんですね。
そうなんです。ロンドンオリンピック後、リオに向けたプロジェクトが始まる際に、日本スポーツ振興センターの男子映像分析スタッフとして参画し始めました。

ー リオオリンピックの後、どのようにして日本ペイントへの入社が決まったのでしょうか?
リオのプロジェクトの契約が2017年3月に終了して、実は一般企業に戻ったんです。その間にも三原監督からずっと声をかけていただいていました。複数回にわたる三原さんのアプローチがきっかけで、2018年2月のタイミングに田代早紀選手と一緒に入社したという経緯です。

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映像分析の歴史と重要性

ー 日本代表の映像分析スタッフの時代は、どのような映像分析をされていたのでしょう?
代表のサポートをしていた時は、ビデオコーディネーターのような役割がメインでした。観客席から撮影した映像の球拾い部分をカットして、短時間で選手やコーチが見られるようにするための編集をすることが多かったです。当時は分析に関して、深くは出来ていませんでした。

ー 現在は分析も進化しておられるのでしょうか?
「もっと深い分析をできるように」ということを三原監督からも期待されていて、日々進歩しています。練習中にもすぐに映像を確認できるようにしたり、試合前の自チームの選手や相手選手の分析などに力を入れています。練習から撮影するようになったのが一番変わったポイントです。

田代選手がチキータに取り組んでいるというお話ですが具体的に田代選手の場合は、どのような映像を活用した練習をされているのでしょうか?
田代選手のチキータ練習の場合は、チキータが上手い森薗政崇選手や、本人が好きな劉詩雯選手(中国)のチキータの映像を見ながら、立ち位置や打球フォームの違いを確認してもらっています。そうすることで、本人が客観的に課題を理解することができるようになっています。

ー やはり客観的に課題を捉えることが重要なのでしょうか。
そうですね。私の大学院での修士論文にした研究内容で、とても面白い結果が出ました。簡単に言うと、サーブからの展開やレシーブからの展開というそれぞれの展開ごとに、「1. ビデオで確認した得失点率の統計値(客観的)」、「2. プレイしていた選手の感覚に基づく得失点率の印象」、「3. 選手を見ていたコーチの感覚に基づく得失点率の印象」を比較してみる実験をしました。

ー どのような結果になりました?
結論としては、やはり選手の感覚もコーチの感覚も、統計値とずれているということがわかりました。「サーブからの展開が得意」と思っている選手はやはりサーブからの展開での得点率が高いという印象になりがちです。しかし、統計値で見ると実はレシーブからの展開の方が得点率が高いということがしばしば発生していましたね。だからこそ、客観的な分析が重要になってくると考えています。

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池袋晴彦コーチが目指す先とは

ー 日本では映像分析において最先端を走られている印象ですが、その辺りどのようにお考えですか?
日本の卓球界ではとてもいいポジションにいるという自覚はあります。ただし、世界で見るとやはり中国が人的リソースも多く、先を行かれているという印象です。今後は編集のスピードや、分析の深さで追いついていきたいと思っています。他にも、映像分析が進んでいるバレーボールやラグビー、メジャーリーグなどを参考に技術を学んでいきたいとも考えています。

ー Tリーグが10月から開幕しますが、どのようなことを目標にしたいですか?
初代チャンピオンですね。映像分析は、選手が強くなるための手段の一つだと思っています。映像分析を通して、可能な限り選手に強くなってもらえるよう、頑張っていきます。

卓球界において、国内最先端の映像分析技術を有する池袋晴彦コーチがサポートする日本ペイントマレッツは目標のTリーグ初代チャンピオンになることができるのか、10月の開幕が待ち遠しい。

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