卓球の見方は5分で変わる(10) コイントスの駆け引き サーブ権かコート権どちらを選ぶ? | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:T2ダイヤモンドの試合前の伊藤美誠(写真左)と佐藤瞳(写真右)/撮影:ラリーズ編集部

卓球ニュース 卓球の見方は5分で変わる(10) コイントスの駆け引き サーブ権かコート権どちらを選ぶ?

2020.05.12

文:安達宿王

5分で変わる卓球の見方、第10回のテーマは「コイントス」だ。

卓球の試合はサービスで始まるが、どちらが最初にサービスを出すのだろうか。テニスや囲碁のように、先手の有利不利はないのだろうか。

結論から言えば、「ある。ただし、有利と取るか、不利と取るかは選手によって違う」となる。

今回はその心理戦に迫っていく。

>>伊藤美誠、“楽しむ姿勢”貫くワケ

決め方のルール

まずはサーブ権の決め方のルールを確認していこう。


写真:T2ダイヤモンドの試合前の伊藤美誠(写真左)と佐藤瞳(写真右)/撮影:ラリーズ編集部

国際試合など大きな大会では、試合開始前に「コイントス」(国内ではジャンケンの場合もある)を行うのが一般的だ。世界ランキングが高い方の選手が、コインの出る面(表か裏)を予想する。審判がコイントスを行い、予想が当たった選手が「サーブ権」か「コート権」を選ぶことができる。

「サーブ権」を選んだ選手は、サービス・レシーブのどちらから始めるかを選び、もう一方の相手選手は最初にプレーするコート(エンド)をどちらにするかを決める。

運が絡むため、必ず自分の思い通りになるわけではないが、その選択には確かに戦略が存在する。選手の考え方を見ていこう。

①「サービス」を選択する理由

卓球は、基本的にサービス側が有利な競技といわれる。個人差はあるが、自分がサービスを持った時の得点率の方が、レシーブの時より高い選手が多い。


写真:T2ダイヤモンドでの伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部

ここ20年程の間に、ボールの変更により回転量が減ったほか、打球の瞬間を隠して分かりづらくする「ハイドサービス」が規制されるなど、サービス自体の威力は低下した。また、2010年代から一般的になった攻撃的レシーブ「チキータ」の出現によって、レシーブ側の得点力は上がっている。

とはいえ、チキータ対策が進んで新たな駆け引きが生まれ、チキータの優位性は一時期に比べれば低下している。

結果、やはり相手次第で打法が限定されてしまうレシーブ側に比べ、コース・回転・長さ等を自由に選ぶことができ、自分の思い通りの展開から始められるサービス側の有利は、動かないだろう。


写真:T2ダイヤモンドでの丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部

卓球はお互いに同じ本数のサービスを出せるわけではなく、どちらかが11点に達した時点で試合は終わる。試合の開始時に「サービス」を選択する理由。それは、自分のサービスからラリーが始まる「得点率の高いパターン」が相手より多く回ってくる、ということにある。

②「レシーブ」を選択する理由

①では、サービスを出す回数が多いほど、有利になる可能性が高いことをお伝えした。では、相手よりサービスを出す回数は少なくなる中、“あえて”レシーブを選択する理由とは、なんだろうか。

ゲームの序盤と終盤では、ゲームの流れや選手のメンタルが大きく異なり、1点の持つ重みも違ってくるという部分に鍵がある。

ゲーム開始時、0-0でサーブ権を持っている状態と、あと2本でゲームの勝敗が決まる9-9でサーブ権を持っている状態では、同じ2本であっても、その重要性が大きく異なるのだ。


写真:T2ダイヤモンドでの張本智和(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

そこで、レシーブから試合を開始することによって、「9-9」の場面で自分にサーブ権が回ってくるのだ。

これが、レシーブを選択する主な理由になる。

序盤から積み上げたデータを総動員して戦略を組み立てる最終盤に、サーブ権を持っていられる安心感は、特に実力が拮抗した試合で大きな意味を持つだろう。
 

③コート権を選ぶ理由

コート選択の戦略についても考えてみたい。

国際ルールではコート領域に関する規定があり、コート自体に極端な有利・不利が発生することは考えにくい。


写真:T2ダイヤモンドでは、コート後方の明るい照明の影響に苦しんだ水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

しかし、時に「空調」「照明」などが、プレーに影響を及ぼす場合がある。特に、「投げ上げサービス」を駆使する選手は、投げ上げたボールが、風に流されてしまうことがある。その影響度合いが、卓球台のこちら側と向こう側で違うこともある。また、投げ上げる際はほぼ真上を見上げることになるため、その位置に照明があると、ボールを見失ってしまう可能性もある。

ゲームごとのコート交代はあるが、環境に敏感な選手の中には、少しでも長く有利な場所でプレーするために、コート権を選ぶという人もいるのではないだろうか。

まとめ

以上、試合開始時のサーブ権、コート権選択に関する駆け引きに注目してみた。


写真:T2ダイヤモンドでの丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部

コイントス自体は運だが、例えば自分が「レシーブから始めたいタイプ」で、相手が「それ以外(サーブ、コート)のタイプ」だった場合は、トスに関係なく、結果的に自分の好みを通すことができる。

もしあなたにお気に入りの選手がいるなら、コイントスの時の仕草や、サーブとレシーブのどちらから入ることが多いか、などを意識して見てみよう。より選手への理解が深まるのではないだろうか。

卓球の見方は5分で変わるシリーズ

(1)点を獲るか?拾うか?
(2)16cmのトスが明暗を分ける「サーブ」に注目
(3)プレイしている時間は2割。残りの8割は「掛け声」「表情」を見るべし
(4)60秒のタイムアウトで何ができるか?
(5)「3つのレシーブ」がメダルの色を決する
(6)メダルの鍵握る「ダブルス」の奥深さ
(7)異性の打球への対応が鍵 ミックスダブルス
(8)6点ごとのタオルタイムが流れを変える
(9)意外と細かい「サービスのルール」