文:ラリーズ編集部
5分でガラリと変わる卓球の見方、第9回のテーマは「サービスのルール」だ。
卓球には使用するラケットやラバーの規格をはじめ、様々なルールが存在している。特に、サービスを出す際のルールはかなり細かく規定されている。サービスは「1球目攻撃」とも言われ、相手に影響を受けず、自分の思い通りのプレーをすることができる唯一の機会だ。だからこそお互いにフェアな環境でプレーをする必要がある。
サービスの主なルールについて、トスを上げる際、打球する際の2つの観点から確認していきたい。
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トスを上げる際のルール
1.ボールに回転を与えてはいけない
2.ボールをほぼ垂直に投げ上げなければならない(斜めトス禁止)
3.台の下からトスしてはならない
4.開いた手のひらにボールをのせて静止し、この状態からトスしなければならない(オープンハンドからトス)
5.トスは16cm以上上げなければならない
6.ボールが落下する途中を打たなければならない
写真:丹羽孝希(スヴェンソン)/提供:ittfworld
卓球はボールの回転がプレーに大きな影響を与えるスポーツである。トスの時点からボールに回転を与えることは回転の方向を分かりづらくすることや、回転をかけやすくすることに繋がり、かなり複雑なサービスを出すことが可能になってしまう。そのため、純粋に打球によって回転を与えることだけが許されている。
2~4のルールについては、トスの際にボールに回転を与えていないということを明らかにするためのルールと考えてよいだろう。例えば、4の「オープンハンドからトス」というルールについて、指の付け根のあたりにボールを置いてトスするのと、手のひらに置いてトスするのでは、後者の方がボールに余計な回転を与えにくく、より公平なプレーに繋がると考えられる。
5、6のルールについては、トスが極端に低い場合、レシーブ側がタイミングをとりづらくなるということは言うまでもないが、いわゆる「ぶっつけサービス」を防ぐ意味合いも大きい。トスをほとんど上げず、ボールが頂点に達する前に打球してサービスを出すと、打球の瞬間が見えづらいだけでなく、ボールの勢いを回転に活かして、強烈な回転をかけることが可能となる。この「ぶっつけサービス」を出されると、レシーブ側の難度が極端に上がり、ほとんどレシーブできないような状態になってしまう。
かつては、5の「16cm以上トスを上げなければならない」というルールはなかったが、サービス側に極端に有利な状況を是正するため、このルールが加わることとなった。
打球する際のルール
写真:平野美宇(日本生命)/提供:ittfworld
7.頭、身体、フリーアームを使ってボールを隠してはならない(ハイドサービスの禁止)
レシーブ側は相手のサービスの方向や回転などを見極める必要があるが、サービスの打球の瞬間や軌道等からこれらを判断することになる。打球の瞬間が見えないと、レシーブ側はかなりの情報量を失ってしまうことになり、サービス側が極端に有利になるため、頭や身体、フリーアームを使ってボールを隠しながらサービスを出すことは禁止されている。
こちらもかつては禁止されていなかったが、サービス側に有利な状況を是正するため、ルールに追加されることになった。
指摘されがちな違反、よく見られる違反とは
実際に試合を観戦している中でよく指摘されている違反としては、
・トスが16㎝以上上がっていない
・打球時にボールが隠れている(ハイドサービス)
・トスが斜めに上がっている
などがある。しかし、これらは選手も意図的に違反をしようとしているわけではなく、ルールをよく理解したうえで工夫をしようとした結果、疑義が生じることが多い。例えば、以前の記事でも解説したが、トスの高さを変えることで相手のタイミングを外すという戦術は一般的であり、戦術を実行する中で、審判からトスが低いと指摘されるといったこともある。
明らかに違反とまでは言えないが、審判としては、試合の公平性を確保するために指摘が必要だと判断しているという事象もあるだろう。審判からサービスの違反を指摘されると選手はかなりリズムを狂わされてしまうことは否めないが、選手と審判それぞれがお互いの立場を理解し合って、フェアな環境はつくり上げられている。
まとめ
サービスに関するルールはかなり細かい内容もあるが、意識しながら試合を観てみるのも良いだろう。サービスの名手は「魔術師」と称されることもある。サービスが選手一人ひとりの試行錯誤の賜物であることがより理解できるに違いない。
卓球の見方は5分で変わるシリーズ
(1)点を獲るか?拾うか?
(2)16cmのトスが明暗を分ける「サーブ」に注目
(3)プレイしている時間は2割。残りの8割は「掛け声」「表情」を見るべし
(4)060秒のタイムアウトで何ができるか?
(5)「3つのレシーブ」がメダルの色を決する
(6)メダルの鍵握る「ダブルス」の奥深さ
(7)異性の打球への対応が鍵 ミックスダブルス
(8)6点ごとのタオルタイムが流れを変える