卓球の見方は5分で変わる(8)6点ごとのタオルタイムが流れを変える | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:吉村真晴(写真左)と丹羽孝希(写真はチームワールドカップ時)/撮影:田村翔/アフロスポーツ

卓球ニュース 卓球の見方は5分で変わる(8)6点ごとのタオルタイムが流れを変える

2020.03.13

文:安達宿王

5分で変わる卓球の見方、第8回のテーマは「タオルタイム」だ。

卓球の試合では、実はタオルを使えるタイミングに制約がある。どれだけ汗をかいていても、いつでも自由にタオルを使えるわけではない。

ルール上、各ゲームの開始から、3-3や7-5など、両者の得点の合計が6の倍数になる6ポイントごと、および最終ゲームのチェンジエンド時(どちらかが5点目を挙げた時)に、短時間のタオル使用が認められる。

何気なく見えるタオルタイムだが、実は試合を進める上で、重要な時間になっている。

選手は何を考えていて、前後の行動から何が見えてくるのか。試合観戦におけるタオルタイムの見どころを確認していこう。

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タオルを使用する理由① 汗を拭く


写真:タオルで汗をぬぐう伊藤美誠/提供:ittfworld

まず、タオルを使う理由として、汗をかいて不快だからということが挙げられる。

これはスポーツをしていれば当然のこと。まして、卓球にとって水分や湿気は天敵だ。汗がラバーにつけば打球の際にボールがスリップしてしまうし、手汗もラケットが滑るなど、パフォーマンスの低下につながる。

本来はいつでも自由にタオルを使わせてあげたいところだが、迅速な試合進行のためには制約も必要になる。それには、次の②の観点も大きく関わってくるのだ。

タオルを使用する理由② 感情や戦術の整理


写真:長﨑美柚(写真右)・木原美悠はタオルタイムで積極的に笑顔でコミュニケーション(写真は2019グランドファイナル)/撮影:ラリーズ編集部

「汗を拭く」という直接的な理由以外に、実は「プレーしていない時間を作る」ということが、タオル使用の大きな目的の一つだ。

最近の国際大会などでは、テニスのようにラリーで遠くに転がったボールはボールボーイが拾い、選手には審判から別のボールが渡される「マルチボールシステム」が採用されるようになった。

これによって、以前ならラリー間のボールを拾いに行く間に頭を整理することができていたが、試合進行の迅速化が進み、プレー以外の時間は少なくなっている。

日本卓球界の第一人者・水谷も「どんどんサーブを出して、相手もサーブ出してくる。自分が何をしようと考える時間もない」と語っている。 

タイムアウト」という制度もあるが、1試合に1度しか使えない。本来なら、選手は1ポイント毎にでも、状況把握や戦術の整理を行いたいはずなのだ。


写真:タイムアウト時もタオルで汗をぬぐい頭を整理することが多い(写真はT2ダイヤモンドでの丹羽孝希)/撮影:ラリーズ編集部

そこで、自分を落ち着かせる「作戦タイム」となるタオル休憩が重要になる。6ポイント毎のため、特に後半の「7-5」「9-9」といった重要な局面で、自身の感情や戦術を立て直すチャンスが与えられる。

心拍数が落ち着き、目先のプレー以外の大局を見つめることのできる「プレー以外の時間」が選手には貴重な場となっているのだ。

タオルタイム後の見どころ


写真:ソフィア・ポルカノバ(写真はT2ダイヤモンド時)/撮影:ラリーズ編集部

では、観戦者側としては具体的にどういった所を見ればよいのか。

やはり、タオル後の最初のプレーに注目したい。最も分かりやすいのは、「サービス」「レシーブ」だろう。

サービスなら、今までと違うモーションや回転のサービスに切り替える、ロングサーブを使う、などの変化が見られたら、タオルを使う間に戦略を練り直したとみていいだろう。

レシーブなら、ストップ中心だったところをチキータなど攻撃的に行く、バックハンドでのレシーブからフォアハンドに切り替える、またはバック側なら回り込む、などが典型例だ。

タオルタイムは、選手のメンタルを切り替えるスイッチにもなる。

そういった観点で試合を見ると、タオルをキーポイントとして、選手の心理状況も分かってくるのではないだろうか。

より楽しみたい方に(観戦者視点の見どころ)


写真:水谷隼はタオルタイムに台を拭く姿が良く見られる/撮影:ラリーズ編集部

最後に、タオルタイムそのものの見どころを紹介したい。これはややミーハー的な視点かもしれないが、試合観戦がより楽しくなること請け合いだ。

それはズバリ、「選手がタオルを取るときの仕草」だ。

例えば、「タオルは必ず四つ折りし、角は必ずきっちり揃える」タイプ、「ルーティンのように、身体の特定の部分だけを拭く」、「極端にタオル休憩が短い」タイプなど、そこには選手の性格も垣間見える。

前者は几帳面で、真面目な性格なのかもしれない。常に全力を出す一方で、相手の予想外のプレーなどに動揺する可能性もあるだろう。

後者は、そもそも汗を拭く必要性を感じていない、あるいはほとんど汗をかかないプレーをしている場合もあるかもしれない。

本題からはずれるかもしれないが、プレー以外のそんなところから選手の性格を想像するのも、卓球観戦の醍醐味と言えるのではないだろうか。

以上、タオル休憩時に選手が考えていることや、見どころを紹介した。

卓球は、「100m競争をしながらチェスをするようなスポーツ」と言われるほど、戦略面が重要な競技。プレー以外の限られた時間をいかに有効活用できるか、ということも勝敗を分けるカギになる。

その一つとして、今回紹介した「タオルタイム」に注目してみると、卓球の世界がより奥深く感じられるのではないだろうか。

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卓球の見方は5分で変わるシリーズ

(1)点を獲るか?拾うか?
(2)16cmのトスが明暗を分ける「サーブ」に注目
(3)プレイしている時間は2割。残りの8割は「掛け声」「表情」を見るべし
(4)60秒のタイムアウトで何ができるか?
(5)「3つのレシーブ」がメダルの色を決する
(6)メダルの鍵握る「ダブルス」の奥深さ
(7)異性の打球への対応が鍵 ミックスダブルス