水谷隼や丹羽孝希らを輩出した名門・青森山田高校出身で、高校時代の最高成績はインターハイシングルス3位。堂々たる実績を引っ提げ、実業団・リコー卓球部のレギュラーを張るのが池田忠功(いけだただかつ・27歳)だ。
池田は、青森山田中高から青森大学と10年間を「卓球中心」の環境で過ごしてきた。一方、現在所属するリコーでは、「仕事と卓球の両立」を掲げ、フルタイムで業務に従事したあと練習に取り組む。
大きく変化した環境下でも池田は、2020年の全日本でダブルスランク入りなど成績を残している。池田の学生時代から今に至るまでの卓球人生、そして今後思い描くキャリアに迫った。(取材:槌谷昭人・ラリーズ編集長)
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青森山田時代は「地獄のような感じ」
――池田選手は青森山田中高から青森大と10年間名門で過ごされていました。まず青森山田中高ではどうでしたか?
池田忠功(以下、池田):上には松平健太さん、上田仁さん、神巧也さんらがいて、下には丹羽孝希、吉田雅己、町飛鳥。上下の世代に挟まれていて試合には確実に出れない。地獄のような感じでしたね(笑)。
写真:2018年ファイナル4での池田忠功(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――地獄と言いながらも10年間いたのはどうしてでしょうか?
池田:強くなるにはこの環境が良いと思って残りました。団体戦に出るのは諦めて、個人戦で結果を出せるように頑張っていました。
写真:池田忠功/提供:リオさん
――1つ下の丹羽選手、町選手、吉田選手の黄金世代からの刺激はありましたか?
池田:みんな練習でも一生懸命やってくれるので、そもそも練習相手になりたいし、ゆくゆくは彼らに勝ちたいと頑張っていました。
彼らに勝てれば全国でも結果を出せるレベルなので良い目標でした。年下でちょっと気にくわないんですけど(笑)。1回だけ東北大会で町に勝ったことがあって、それが1番心に残ってます。
今も活きるブンデスリーガでの経験
――進学した青森大学ではどうでしたか?
池田:自分が2年生までは上田さんら上の代がいて、インカレで2位になるなど結果を残していました。ただ、自分より下の代の選手を獲らない方針に変わって、大学3、4年の時には選手がいなくて、団体戦が組めず寂しかったですね。
写真:池田忠功/提供:リオさん
――団体戦に出られない中、卓球生活はどうでしたか?
池田:モチベーションが少しずつ下がっていました。そのとき、青森山田のコーチで来られていた邱建新さん(現・木下グループ総監督)から「ブンデスリーガに来ないか?」とお声がけいただいて参加しました。
――ドイツの卓球リーグ・ブンデスリーガでのプレーはどうでしたか?
池田:3年の時が3部で勝率7割くらいあったんですけど、4年生で2部に参戦すると3割くらいしか勝てなかったです。
でも、邱さんから練習方法や戦術、考え方を教えてもらって、今に繋がっていると思います。
写真:2018年ファイナル4での池田忠功(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――今も大事にしている当時の教えはありますか?
池田:邱さんはいつも試合を想定したシステム練習を組みます。そういう練習メニューは今もやっています。
今は、仕事をしてから卓球をするので、やっぱり練習時間が短い。これまではいろんな技術をたくさん練習して苦手を補っていたんですけど、得意な得点パターンを作っていかないと勝てない状況になってきた。なので試合を想定したシステム練習は活きていると考えています。
団体戦で上を目指す喜び
――今はリコーに入社されて、リコー卓球部は「仕事と卓球の両立」をモットーにしています。働き方や卓球部での活動はイメージ通りでしたか?
池田:仕事をしっかりやりつつ、卓球もできる範囲で頑張っていく。自分的にはイメージ通りでした。
大学で2年間団体戦を組めてなくて、社会人になって上を目指して団体戦を組める。その中で結果を出す喜びを感じることができて充実しています。
むしろ仕事を経験できているのは他のチームと比べてプラスと思っています。
写真:2020年全日本での池田忠功・宮本幸典(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――池田選手は、どういった領域の業務を担当されてるんですか?
池田:オフィスプロダクツ事業本部 OC事業センター 第二画像技術開発室 包装設計グループで働いています。業務的にはリコーグループ開発商品を運搬・発送する際の発泡スチロールや外箱の設計や、市場の輸送実態に合わせた包装貨物試験評価技術の開発を行っています。
――仕事は大変ですか?
池田:数字の計算などは元々好きだったので、楽しく仕事はできていますね。
写真:2018年ファイナル4での池田忠功(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――それは何よりですね。逆に卓球に集中したい、仕事だけに集中したいと思うことありますか?
池田:入社したての頃は時間配分ができず、仕事に慣れていないのできつかったです。卓球で入っているので卓球でも成績を出さなくちゃいけないと思って、最初の方は苦労していました。
でも今は、試合前にどれくらい練習をやれば良いかがわかり、時間配分ができるようになったので慣れてきました。
――仕事が卓球に活きている場面はありますか?
池田:例えば、時間配分や計画を立ててやることもそうですし、ダメなところに対してどうするかを優先づけて判断したり、仕事をやっていることで卓球に影響があると考えています。
――逆に卓球から仕事に活きているものは?
池田:粘り強くやっていくというところですね。あとはダメな技術に対して、調査したり試行錯誤したりするところは仕事にも繋がっているのかなと思います。
卓球で培った経験を基に仕事で勝負
――今後の卓球キャリアはどう考えていますか?
池田:リコーは大体6年で引退する感じなので、今年と来年が最後と計画しています。
自分的は大きな未練もなく、あと1、2年自分なりに頑張って今以上の成績を出したい。リコーの後輩が抜けないような成績を出していけたらなと思っています。
写真:2020年全日本でベスト8入りいした池田忠功・宮本幸典(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――引退後はリコーで仕事をしていきたいという考えですか?
池田:ずっと残って仕事をしていこうと考えています。
仕事は卓球と比べて得意分野ではないので厳しい部分もあるとは思いますが、コミュニケーション力など他の人が持っていない部分で勝負していければいいなと思っています。
仕事でも自分次第で上に行こうと思えば行けると思うので今後が楽しみです。
写真:工藤監督と話す池田忠功/提供:リオさん
池田は、青森山田中高で上田や神、丹羽ら今やプロとして活躍する選手に揉まれてきた。大学では人数不足で団体戦を組めないという過酷な10年間を過ごした。
それでも与えられた環境でコツコツと努力し、チャンスをものにして成果を出してきた。
オンライン取材の画面越しからも伝わる柔和で流暢なコミュニケーション力を活かし、どんな厳しいボールもねじ込むプレースタイル同様に粘り強く、ビジネスの世界でも活躍する池田の姿が目に浮かぶ。
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写真:リコー卓球部/撮影:ラリーズ編集部
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