「仕事と卓球の両立」をモットーに掲げ、選手たちはフルタイムで働きながら練習をこなすリコー卓球部は、2018年ファイナル4優勝で創部初の年間王者を勝ち取った。その決勝戦のラストで勝利を収めたのが、鹿屋良平(かのやりょうへい・28歳)だ。
社会人6年目となる28歳は、現在選手兼コーチとしてチームを支えている。今回は、チーム最年長の鹿屋に「2018年飛躍の理由」や「卓球人生のターニングポイント」を聞いた。(取材:槌谷昭人・ラリーズ編集長)
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チーム最年長・鹿屋が若手をサポート
――現在、リコー卓球部の選手兼コーチですが、特別な役割があるのでしょうか?
鹿屋:特別な役割はないんですけど、一番最年長なので、新人が入ってきたらサポートしたりアドバイスしたりは心がけてます。
今年度は高校、大学と同じの髙取(侑史・野田学園高→法政大)が新人で入ったので、社会人として一人前になれるようにサポートしたいと思ってます。
写真:鹿屋良平/提供:リオさん
――やはり皆さん卓球より仕事面での悩みが多いのでしょうか?
鹿屋:そうですね。仕事の方が戸惑うことが多いと思います。
みんな中高大で卓球をやってきているので、卓球面ではあまり言う必要はない。一方、仕事はリコー特有の用語などがあり、業務については知らないことだらけだと思うので、サポートしないといけないと思いますね。
――鹿屋選手はどういう業務をされていますか?
鹿屋:入社してからずっと、CP事業本部 事業戦略室 事業管理グループという業務用の印刷機を売る部署にいます。主に商用印刷事業部門の事業計画や戦略策定に必要な市場・競合動向、全需・シェア動向の情報収集や分析を行う仕事をしています。
数字情報が多くて、アメリカで何%シェアが落ちたとか、今期どれぐらい売れたとか、他社はなぜこれくらい落ちたのかを日々分析や考察をしています。
「仕事と卓球の両立」を体現する男
――そもそもリコーを選んだきっかけは?
鹿屋:卓球引退後、仕事で残れる方が自分の人生として良いと思ったので、第一志望にしました。
写真:2020年全日本選手権での鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――卓球できる間はできるだけ卓球一本でやっていきたいとは考えなかったですか?
鹿屋:大学卒業して卓球だけに絞っても飛躍的に伸びはしないだろうなと感じていました。
それなら仕事ができる環境で、社会人としての知識や経験を積んだ方が自分にとってメリットがある。卓球一本で引退した後に、例えば30歳で新人と同じ状態から仕事モードに切り替えるのは辛いですからね。
――社会人になって仕事と両立する中で、もっと仕事だけに集中したいだったり、逆に卓球だけに集中したいと思うときはありますか?
鹿屋:それもあんまりないですね。今、良いバランスで卓球と仕事、どちらも打ち込めてます。
一人の社会人として、仕事ができて会社に貢献しつつ、卓球も疎かにせずに十分打ち込める環境でやれるのはありがたいことです。なるべく今の良い塩梅を保ちつつ卓球と仕事どちらもやっていきたいです。
写真:2020年全日本選手権での鹿屋良平(ペア・有延大夢)/撮影:ラリーズ編集部
――引退後、仕事一本になったときのことは考えますか?
鹿屋:僕、実は今年で引退予定だったんですけど…。まだ引退するかどうかはわからないんですが、卓球に一区切りつけたら今後は仕事に重きをとは考えています。
2018年飛躍のワケ
――リコーと言えば2018年のファイナル4優勝。決勝戦ラストで鹿屋選手が勝利して創部初の優勝を決めました。振り返っていかがですか?
鹿屋:最高でしたね。
あの時は石﨑孝志さんらOBさんも観客席から立ち上がって応援してくれて、観客席に向かって吠えたりベンチに向かって吠えたりとやってて楽しかったですし、何より勝って恩返しできたことが一番ですね。
写真:2018年ファイナル4での鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――2018年は前期日本リーグも創部初優勝でした。2018年の躍進をどう捉えてますか?
鹿屋:2017年はあまり勝つことができなくて苦しんだ時期がありました。
そこから練習メニューを見直してトレーニングを増やし、精神的な成長もあったと思いますし、苦しかった時期があったからこその2018年の飛躍かなと思いますね。
――仕事との両立で練習時間が限られる中、具体的にはどういう工夫をされてますか?
鹿屋:練習1つ1つの質を上げることを意識しています。
僕がやっていたのは練習1球1球を9-9など大事な場面と仮定する。そうすれば自然とミスも少なくなりますし、安定した技術を手に入れることができると思います。
写真:鹿屋良平/提供:リオさん
結果が自信を生み、自信が結果を生む
――野田学園高校、法政大学、実業団リコーと卓球界のトップで戦い続けています。ご自身のターニングポイントとなったのはいつでしょうか?
鹿屋:高校3年生のインターハイで3位になれて、法政大学、リコーに入れるようになったのでそこでの結果です。
僕は中学校1、2年から高校2年まではめちゃくちゃ弱かった。全然シングルスで勝ってなくて、団体戦でも強い選手に勝てなくて。
3年生のインターハイで外シードに吉田雅己選手(当時青森山田高校)がいて、4回戦フルゲームで勝つことができた。それが自信になって、平野友樹選手(当時野田学園高校)にも勝って3位に。そこからは自信がついてとんとん拍子で大学生になりました。
写真:2020年全日本選手権での鹿屋良平(リコー)/撮影:ラリーズ編集部
――結果が自信をつけてくれるんですね。
鹿屋:プレーが上手くいっても負けるときはある。最終的にはやっぱり勝つか負けるか、結果が一番大事ですね。
写真:鹿屋良平(リコー)/提供:リコー
卓球もビジネスも、結果を出すことがすべて。 努力の過程を経た上で出した結果が大きな自信を生み、その自信がまた大きな結果を生んでいく。ビジネスパーソンとしての大事な心得を卓球で身に着けた部員たちが、「仕事と卓球の両立」というリコー卓球部の伝統を守っていく。
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写真:リコー卓球部/撮影:ラリーズ編集部
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