「好き」を仕事にするのは難しい。YouTubeの広告文句で「好きなことで、生きていく」と謳われていたが、そう簡単なことではない。その「好き」が卓球だった場合、選択肢はさらに狭まる。選手として生きていくのもコーチになるのも卓球メーカーに勤めようにも、そもそも募集枠が少なく、時には存在しないことさえある。
それでも「卓球とともに生きていく」方法はある。実は卓球にまつわる会社や、卓球経験者を採用したい企業は意外にも多く存在するのだ。もちろん普通の求人サイトを見回っても発見することは難しい。だが、目下、企業は優秀な卓球人材を求めている。ラリーズだからこそ伝えられる「卓球×求人」。それが“卓求人(たっきゅうじん)”である。(ラリーズ編集部 武田鼎)
メディア事業と卓球場運営を手掛けるIT企業
「卓球に関わる仕事がしたい。何より卓球が大好きだ、という人に来てほしい」と語るのはエレメントの渡邊昭太さんだ。エレメントは主にネット上の保険の代理店事業を営むIT企業だ。IT企業の社員がなぜ卓球人材を求めているか。実はエレメントはIT事業と並行して卓球事業を手がけている。卓球用品の通販サイト「たくつう」や横浜市都筑区にある卓球スクールなどが開催する「卓球空間〜Fun Table(ファンタブル)〜」だ。卓球事業を初めて約3年、今では売上の半分ほどを卓球事業が占めているという。渋谷区南平台のオフィスを見渡すと卓球台が並んでいる。
エレメントの「たくつう」は卓球グッズのECサイトで、バタフライ、ニッタク、VICTAS、ヤサカ、アンドロなど国内外のメーカー商品をほぼすべて取り揃える幅広さが魅力だ。また「たくつう」内にある「たくつうPRESS」では卓球のハウツー系のコンテンツを取り揃える。各メーカーの新作用具の使用感などを記事にし、卓球のレベルに応じた用具の解説をコンテンツとして揃えている。また、横浜市の「卓球空間〜Fun Table(ファンタブル)〜」では日本体育協会卓球公認コーチである小林宏彰さんがコーチを務める。インターネット上だけではなくリアルな卓球場を経営していることもエレメントの卓球事業の強みの一つだ。
卓球事業の責任者を務める現在25歳の渡邊さん。「いつか卓球を仕事にしたい」。そんな熱い思いで新卒でエレメントの門を叩いた。「以前から卓球に関する仕事ができればいいな、と思っていました。けど、就活の時に卓球っていうワードを中心に就活しても企業に出会えるわけないですよね(笑)。そこでいろいろ調べたらこの会社が以前、卓球アプリっていうのを出してて。『ちょっと面接してください』っていきなりメールしたんですよ」と経緯を語る。そこで大胆にもエレメントの近藤勉社長は渡邊さんを責任者に据えた。
無論、企業の舵取りを担う近藤さんからすれば大きな決断だ。エレメントは保険の代理店でウェブを通じて送客するビジネスモデル。それが一転して卓球場の人件費や卓球用品といった「在庫」を抱えるビジネスを始めることになったのだ。無論、何より大変なのは渡辺さんだ。なにせ新卒採用直後から事業責任者だ。「一番違うのはコミュニケーション。ウェブ代理店って基本的にはお客様とのフィジカルなコミュニケーションってないんですよね。でも卓球場とか通販ってお客さんとダイレクト。電話や対面でのサービス業なんだな、と気付かされました」と苦労を語る。
今ではマネジャーとしてチームを束ねるが、「大きくなると情報共有とかまた別の難しさが出てきますね」と苦笑する。
仕事後には卓球大会開催
IT企業でありながら卓球事業を進めるエレメント。一体どんな社員が働いているのだろうか。エレメントは10人中6人が卓球経験者、卓球好きにはたまらない会社なのだ。働き方についても「残業はありません」ときっぱり。だが、19時を過ぎると退社するわけではない。どこからともなく「カコン、カコン」という乾いたラリー音が響く。突如「即席卓球大会」始まるのだ。
ベンチャーには“○人の壁”と言われる、“超えなければならない壁”がある。例えば「10人」まで1人のリーダーが牽引できるが、「30人」を超えても1人がマネージしようとするとコミュニケーション不全が起きる。それを放置したまま50人以上に拡大するとコミュニケーション不全は根深い病巣となり、企業文化をも蝕んでいく。だからこそベンチャー企業は時にポエムのようなビジョンを掲げ、徹底して社員と目線を合わせるのだ。
だが、エレメントでは今のところコミュニケーション不全は起きていない。「だってこれだけしょっちゅう卓球ばっかりしていればそりゃコミュニケーションは嫌でも取りますよね。卓球はその役割を担ってます。だからこそ仕事では自立した“個”が能動的に仕事を進めています」と渡邊さんは自信ありげに語る。
最後に渡邊さんにどんな人材を求めているのか、話を聞いた。「2年半でおかげさまで売り上げも伸びてきました。通販のバックヤード的な業務が増え、
それに合わせて新規の企画などにも時間が割きにくくなってきています。エレメントとしては卓球メディアの企画・運営やオリジナル商品の企画・開発などにさらに注力していきたいと考えていてそのためには卓球への熱意が溢れる仲間を必要としています。卓球が好きで卓球を仕事にしたい人、ぜひ一度お会いしましょう」。
あなたの“好き”をチャンスにするいい機会かもしれない。