全日本直前に振り返る「Tリーグ名場面」(女子編) | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:石川佳純(木下アビエル神奈川)/提供:©T.LEAGUE

大会報道 全日本直前に振り返る「Tリーグ名場面」(女子編)

2021.01.08

文:ラリーズ編集部

3ヶ月遅れの開幕。無観客試合。

例年と異なる環境下でのスタートとなった3季目のTリーグも前半戦45試合を終え、様々なドラマが生まれた。まずは女子前半戦の名場面を、オンライン会見で生まれた名言とともに振り返る。

これを読めば11日に開幕する全日本選手権観戦がもっと楽しくなること間違い無しだ。

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新戦力が躍動。デビュー、現役復帰、新ペアも


写真:木村香純/撮影:ラリーズ編集部

今季Tリーグ女子は開幕から新戦力が躍動した。

11月17日の開幕戦でデビュー戦で全日本王者の早田ひなに勝利し、一夜でヒロインとなったのは今季から参戦した木村香純(木下アビエル神奈川)だ。エースの石川佳純を海外遠征で欠く中、同じ名前の“カスミ”がチームを救ったとしてヤフーニュースでもトップ入り。木村はその後もシャンシャオナ(ドイツ/日本ペイントマレッツ)、ユモンユ(シンガポール/日本生命レッドエルフ)、サマラ(ルーマニア/トップおとめピンポンズ名古屋)と各国の代表選手を立て続けに倒し、リーグの顔となった。

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またTリーグ最年少の12歳でシングルス初出場を果たしたのが張本美和(木下アビエル神奈川)だ。張本は身長が162cmと大きく伸び、「鋭いコースに来ても、足が長くなったのでいろんなボールに対応できる」とプレーの進化についても報道陣に語った。身長も実力もまさに伸び盛りだ。

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トップ名古屋からは、選手を引退していた元世界選手権代表の井林茉里奈(28)が、球団の広報担当と兼務する形での異例の現役復帰を果たした。「前までピッチが速い卓球が主でしたが、しっかり溜めて打つことなど、現役のときにはできなかった技術を取り入れることができています」とスタイルチェンジを見せた。12月5日には鈴木李茄とのペアで初勝利も挙げ、見事なカムバックを遂げた。

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カギを握るダブルス、2つの常勝ペアが誕生


写真:前田美優(写真左)・赤江夏星(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
ダブルスは、2つの新ペアが台風の目となった。ここまで開幕5連勝を含む計8勝(3敗)とリーグ最多勝利数を挙げているのが日本生命レッドエルフの前田美優、赤江夏星ペアだ。日本生命監督の村上恭和氏も「他チームのダブルスの10倍くらい練習してる。いや、もっとかな」と同じ寮で暮らす8歳差ペアの豊富な練習量を勝因に挙げた。国際大会でのシングルスの実績がある選手が世界中から集まるTリーグにおいて、前田、赤江ペアはダブルスのコンビネーションを日々追求することで、格上選手を次々となぎ倒している。

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また木下アビエル神奈川の長﨑美柚、浜本由惟ペアも6勝0敗とチームの首位に大きく貢献中だ。2人のパワフルな攻撃に目が行きがちだが、無敗の理由は試合後の振り返りにもある。


写真:長﨑美柚(写真左)・浜本由惟/提供:©T.LEAGUE

長﨑はクリスマスイブに行われた試合の勝者インタビューで「邱監督は試合終了直後に、試合の中で良くなかったポイントを絞ってアドバイスしてくれる。今日は『サーブが台から出ることが多かったので、サーブ練習をやらないとね』と言われました」とコメント。勝利という結果に満足することなく、更にプレーの質を高めようとする飽くなき向上心こそが常勝の秘訣なのかもしれない。

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移動と隔離を乗り越えて


写真:馮天薇(日本ペイントマレッツ)/提供:©T.LEAGUE

今季のアスリートたちを襲ったのは、「隔離期間」という大きな敵だ。コロナ感染リスク低減のため、海外からの入国後14日間はホテルで隔離され、その間は練習が出来ない。繊細なボールタッチと激しいフットワークが要求される卓球競技において致命的なハンデとなった。

Tリーグ女子ではドイツ、シンガポール、ルーマニアといった強豪国の代表選手が来日したが、初勝利を挙げるまでに時間がかかった。シンガポール代表として五輪で3つのメダルを獲得している馮天薇(フォンティエンウェイ)でも「隔離明けは試合の状態や感覚が違う」と4戦目にしてようやく白星をもぎとった。

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東京五輪代表の石川佳純(木下アビエル神奈川)は、11月は中国開催の女子ワールドカップ、ITTFファイナルに出場していたため、12月からTリーグに合流した。アスリートトラックの適用により日本への帰国時には隔離は強いられなかったが、中国滞在中に大会直前での隔離を経験した。「(中国は)隔離も厳しかったし、良い経験になった。久しぶりの国際大会の反省や半年間試合がなくて練習してきたことも(Tリーグで)活かしたい」とコメント。その言葉通り、接戦での勝負強さを見せ、開幕7連勝を果たした。

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その石川に2020年最終試合で土をつけたのが、昨季MVPの森さくら(日本生命レッドエルフ)だ。欧州チャンピオンズリーグで腕を磨いて戻ってきた森は、石川に対しラブゲームを含む完勝で卓球ファンを沸かせた。ファンが驚いたのは結果だけではない。森と言えば、雄叫びをあげ、気合を前面に出すスタイルが特徴の1つだったが、石川戦では静かに戦う“新生森さくら”のプレーが見られた。


写真:森さくら(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

「今までは気合前面だった。でも私も24歳。これからは新しいことにチャレンジして、若い子たちには負けないという気持ちで今季は臨んでいる。まずは冷静に。気合や気持ちより技術を試したいと思った」と本人も心境の変化を語ってくれた。世界中で刺激を受け、過去の自分を越えていく。卓球トップアスリートの進化に脱帽だ。

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シングルス勝利数は早田がリードでMVP 木原も続く


写真:ビクトリーマッチに勝利した早田ひな(日本生命レッドエルフ)/提供:©T.LEAGUE

女子最多のシングルス14勝(3敗)を挙げ、前期MVPを獲得したのが2020年の全日本選手権を制した早田ひな(日本生命レッドエルフ)だ。日本生命の村上恭和総監督は早田について「強さの秘訣は戦術を研究する研究家であること。(負けたあとに)同じ戦い方をしない。対戦相手が決まればビデオを見てすぐに研究している」と評した。


写真:早田ひな(日本生命レッドエルフ) /撮影:ラリーズ編集部

早田は12月23日のトップ名古屋戦のビクトリーマッチで勝利後のインタビューで「先日(対戦相手のハン・インには)ゲームオールで負けていた。(今回は)1ゲーム勝負だったので、すべての戦術を出し切るつもりで自分らしく落ち着いてプレーできてよかったです」と一度負けた相手に対し柔軟な戦術変更により連敗を避けられたことを明かした。卓球は頭脳戦であることを改めて証明した。

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16歳の木原美悠(木下アビエル神奈川)もシングルス9勝4敗と好調を維持する。今季から「1位になるために背番号を1に変えた」という木原は、「この8ヶ月間、フォアの攻撃力を課題に強化してきた」とコロナ禍で試合が無い間、課題を絞って集中強化してきたことを明かした。


写真:木原美悠(木下アビエル神奈川)/提供:©T.LEAGUE

その結果、対戦相手は木原のフォアハンド強打を恐れて甘い返球ができなくなりレシーブミスを連発。木原の今季のサービスエースはリーグトップの86と成果が数字にも現れた。また、各チームのエースとの対戦が増えていることについても「自分の実力を試す機会が増えているので、プラスに考えています」と笑顔でコメント。技術面での強化に経験も加わり、今後どのように成長していくのか期待せずにはいられない。

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2021年は1月の全日本そしてTリーグ再開へ


写真:木原美悠(木下アビエル神奈川)/撮影:ラリーズ編集部

今年は1月11日に開幕する全日本選手権から、卓球トップアスリートにとっての大会がスタートする。Tリーグで名場面を繰り広げた選手たちが日本一を懸けてシングルスのトーナメントで戦う。

また1月20日から再開するTリーグ後半戦は1月に15試合、2月に24試合、3月に年間王者を決めるファイナル2試合と続く。

Tリーグ12月後半ハイライト

男子

女子

ダブルスを制すものがTリーグを制す!?『データでみるTリーグ』

ダブルスで勝利するとその試合に勝つ確率は70%以上ってホント?
サーブよりレシーブで点数を稼ぐ選手は存在する?
Tリーグ出場選手の最も多い年代は25〜29歳?

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