卓球技術・コツ 1人でもできるサーブ練習6ステップ|頭で勝つ!卓球戦術
2023.11.18
戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
今回取り上げるテーマは、「サーブ練習」についてだ。サーブ練習と聞くと、初歩の基本的な練習と思ってしまうが、サーブ練習ほど大切なものはない。卓球は必ずサーブから始まり、「1球目攻撃」と呼ばれるほどに、サーブでどれだけ相手を崩せるか、得点を奪えて試合を優位に進められるか、非常に重要である。
名門と言われる卓球の強豪校も、日々の練習メニューの中に必ずといっていいほどサーブ練習の時間が組み込まれている。
ただ、「サービスエースが取れる」=良いサーブというわけでもない。このあたりも考えていくとかなり深い話になってしまうので、今回は「サーブ練習」にフォーカスを当てて、そのやり方や効果的な方法について考えていこう。
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このページの目次
新しいサーブを覚える練習6ステップ
それではあなたが今から新しく「巻き込みサーブを覚える」と仮定して、その練習方法を考えていこう。今回は以下の6ステップで考える。
・ステップ①:まずは出せる(台に入れられる)ようになる
・ステップ②:低さ・短さのコントロールが出来るようになる
・ステップ③:何回転が出ているのかを把握する
・ステップ④:同じフォームで2種類以上の球種が出せるようになる
・ステップ⑤:試合の中で使う想定で出せるようになる
・ステップ⑥:レシーブのパターンを想定して、3球目攻撃までを組み立てられるようになる。
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ステップ①:まずは出せる(台に入れられる)ようになる
なにはともあれ、まずサーブを出せるようになることが先決である。スイングや、身体の使い方、ボールのとらえどころなどを意識しながら、とりあえずは「ミス」にならずに卓球台に入れられるように練習してみよう。まだこの段階では、ぼてぼてのバウンドでいいし、回転も気にしなくてよいだろう。
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ステップ②:低さ・短さのコントロールが出来るようになる
では次に、ぼてぼてのサーブを、バウンドをなるべく低く出せるように練習してみよう。どんなに強烈で複雑な回転のサーブを出せたとしても、バウンドの高いぼてぼてのサーブでは一発で叩かれて終わりだ。回転よりもまず低さと短さを意識することはマストだ。
バウンドを低くするためには、ボールを打球する位置を、ネットとほぼ同じくらいの高さに調節すればよい。このときは、ラケットを持つ手だけで調節するのではなく、下半身の重心を低くして、身体全体を使って調節するようにしてみよう。
手だけで打球位置を調節しようとすると、どうしても安定しないし、競った場面でコントロールがブレることが出てきてしまうのだ。身体全体を使う意識で、体勢をなるべく低くして、ネットすれすれを通るサーブを心がけよう。
そして短さに関しては、第一バウンドをネット近くに落とすように狙えば、自然と短くなるはずだ。また、ボールを前に飛ばそうとし過ぎると、推進力がついて長くなりがちなので、その点も注意しよう。
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ステップ③:何回転が出ているのかを把握する
では低く短くコントロール出来るようになったら、ようやく回転である。まずは今出せているサーブがどんな回転なのかをちゃんと把握するために、相手に立ってもらい、ラケットに当ててもらう。このときのボールの飛び方で、今自分がどんな回転を出しているのかを判別する。
たとえば横下回転を出しているつもりなのに、ラケットに当たって斜め上に跳ねているのなら、横上回転が出てしまっていることになる。スイングやボールの捉えどころを調節して、思った通りの回転が出せるように練習してみよう。
実はこれをやらない人は意外と多いのだが、非常に重要だ。自分では順下回転を出しているつもりが、実は横下が出ていた、というケースは往々にしてある。そうなると思った通りのレシーブが来ないことになるので、まずは自分を知るという意味で、しっかり確認することを怠ってはならない。
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ステップ④:同じフォームで2種類以上の球種が出せるようになる
ではここからが、より実践的な内容となる。あなたは新しく巻き込みサーブが出せるようになった。よく切れた横下回転で出せるようになった。しかし、それだけでは試合では有効的に活用出来ない。
野球で考えると、160km/hを超える剛速球のストレートを投げられるピッチャーがいるとする。誰も受けたことのないようなスピードで、とてもバットに当てられたもんじゃない。
ただ、そのピッチャーが「160km/hのストレートしか投げられない」選手だとしたらどうだろう。おそらく何度か対峙するうちに、次第に慣れていって簡単にヒットが打てるようになるだろう。
あくまで160km/hの速球と、120km/hのフォークといったように、相手に2択を迫った上で初めて活きるのだ。全く同じフォームから、速球のストレートが来るか、遅いフォークが来るか、ギリギリまで分からない、という状態であるからこそ効果を発揮する。
卓球も同じだ。「横下回転の巻き込みサーブ」があるのなら、全く同じフォームから「横上回転の巻き込みサーブ」とか、「ナックルの巻き込みサーブ」といったものを出せるようにならなければならない。
そしてそれは回転だけではない。コースについても同様である。「バック前へ横下回転の巻き込みサーブ」と「フォア前へ横下回転の巻き込みサーブ」を、本当に打球するギリギリ寸前まで相手に悟られないようなフォームで出すことが出来れば、もちろん有効だろう。
また、そこに長短も加えられればより強い。
「フォア前へ横上回転の巻き込みサーブ」
「フォア前へ横下回転の巻き込みサーブ」
「バック前へ横下回転の巻き込みサーブ」
「バック前へ横上回転の巻き込みサーブ」
「バック深くへ横下回転の速いロングサーブ」
これらを全て同じフォームで、ギリギリまで相手に分からないように出す。ここまで出来れば非常に強力な武器となるだろう。相手からしてみれば、「何回転で、どこに来るのか全く予測が出来ない」となるので、絶対に嫌がられるだろう。
ステップ⑤:試合の中で使う想定で出せるようになる
サーブ練習をしていくなかで、最も陥ってしまいがちな失敗が、「練習のときは出せるのに試合になるとミスをしてしまう」というパターンだ。
たとえばあなたが、「フォア前への横下の巻き込みサーブ」を練習しているとする。ボールを取り、台に構えて、サーブを出す。
1回目 ネットにかけてミス。
2回目 ネットは超えたものの、長すぎて台から2バウンドせずに出てしまった。
3回目 短さを意識しすぎてバウンドが高くなってしまった。
4回目 低く短く出せたが、強く回転がかからなかった
5回目 思い通りのサーブが出せた
6回目 思い通りのサーブが出せた
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これを見てどう思うだろうか。5回目のチャレンジで、ようやく自分が出したいサーブが出せているのだ。これで、7回目以降も思い通りに出せれば、「自分はフォア前への横下を出せる!」と思い込んでしまう。
しかし、本来試合でこんな状況はない。必ず毎回、「1回目」の状況のはずだ。試合の中で、短さや低さを微調整している暇はない。つまり、1発で成功させられるように出すことが出来なければ、それは覚えたとは言えず、試合の中で使うことは出来ないのだ。
これを防ぐ為にはどうすればよいか。それはサーブ練習の段階で、「常に1発で成功出来るレベルまで練習する」ことだ。
1回目 フォア前横下巻き込み
2回目 フォア前横下巻き込み
3回目 フォア前横下巻き込み
4回目 フォア前横下巻き込み
5回目 フォア前横下巻き込み
と、練習するのではなく、
1回目 フォア前横下巻き込み
2回目 バック前下回転
3回目 フォア前横下巻き込み
4回目 バックに横ロングサーブ
5回目 フォア前横下巻き込み
といったように、必ず「1発目」になるようにサーブ練習をしていくのだ。このような練習を日々しっかりしていれば、試合の中でとっさに出そうと思ったときも、思い通りのサーブが出せるようになっていくはずだ。
ちなみに余談だが、水谷選手の場合は初めて対峙する選手との試合では、第1ゲームのラブ・オールから11点を取るまでに出すサーブの順番を完全に決めてしまっているのだという。そこまでしていれば、サーブ練習でも同じ順番でサーブを出していけばよいので、より実践に近い形でサーブ練習が出来るだろう。
>>【初心者必見】ツッツキのやり方とコツ|卓球基本技術レッスン
ステップ⑥:レシーブのパターンを想定して、3球目攻撃までを組み立てられるようになる
新しいサーブも覚えて、試合の中でもとっさのタイミングで問題なく出せるようになった。が、最後にもうひとつしっかり考えて欲しいことがある。それが、「3球目攻撃」だ。
もちろん、サービスエースだけで試合を勝ちきることが出来れば文句はないが、そんなことはまず無理である。必ず返ってきたボールに対しての処理が必要になってくる。高校生などを指導していると、複雑なサーブでエースを取って得点を重ねるのが得意な選手に会うことがある。しかしそういった選手によくあるのが、そのサーブを返されたときに何も出来ないという事態だ。
強烈な回転をかけていれば、当然その回転が残って返ってくるので、3球目攻撃もそれを加味して考えなければならない。ふわっと浮いて返ってくれば、タイミングを取って、しっかりと踏み込んで強打しないといけない。そういったことが出来ないのだ。
なので、新しいサーブを覚えた際は、必ず「どういったレシーブが返ってきやすいのか」を想定して、それに基づいた3球目攻撃までをセットで組み立てていこう。
たとえば筆者のケースであれば、フォア前へ横下回転のYGサーブをよく出す。このとき私は、
・バックへのツッツキ8割
・フォアサイドの厳しいコースへのツッツキ2割
のレシーブが返ってくることを想定して待っている。やや台の真ん中近くで平行足で構えて、3球目はバックハンドドライブで狙っている。フォアサイドの厳しいコースへツッツキが来た場合は、打点を落としていいので、ストレートやミドルを狙ってループドライブでしっかりとつなぐ。
経験上、フリックをされることはほとんどないので、台から距離を取って待つ必要もないし、ストップも滅多にこないので、台上を警戒することもない。ほぼバックへのツッツキ待ちしかしてない。
だがしかし、同じフォア前への横下でも、バックサーブで出したときは、フリックをされる確率がかなり上がる。その理由は、おそらくバックサーブで構えた時点で相手はフォア側を警戒することが考えられるし、もしかしたらYGサーブのときよりも若干浮いてしまいがちなのかもしれない。なので、バックサーブで出すときはやや台から距離を取ってフリックにも備える待ち方をしている。
こういったように、自分のサーブの性質を見極めて、どういうレシーブが返ってきやすいのか、ということを常に想定する必要がある。その為には試合の中で多く使って、相手の反応をちゃんと頭にデータとして蓄積しておくことだ。そうしていけば、サーブを「ただ出すだけ」ではなく、3球目攻撃とのセットで考えられるので、試合の進め方がぐっとラクになるだろう。
>>下回転サーブの最適なレシーブとは?トップ選手に学ぶレシーブ講座
まとめ
2回に渡ってサーブ練習のやり方・考え方をお送りした。おそらく社会人の選手などは、筆者も含めサーブ練習を怠りがちな傾向にあるのではないだろうか。監督に与えられる練習メニューがあるわけでもないし、やはり一人で黙々とサーブ練習をするよりも、相手とラリーをする方が楽しい。しかし、なかなか時間が取れない社会人選手こそ、しっかりと取り組むべきであると考える。
それにサーブ練習は、相手がいなくとも、たった1人で出来るのだ。ぜひ時間を有効的に活用し、練習のなかに組み込んで欲しい。
そしてやるのならば、ただ漫然とやるのではなく、しっかりと試合の中で使うことを想定した、「生きたサーブ練習」をすることをぜひ心がけてみると、より実力のアップに繋がるだろう。