取材・文: 赤羽ひな(ラリーズ編集部・欧州特派員)
卓球の誕生
卓球の発祥をご存知だろうか。
卓球は、1901年にイギリスのロンドンで誕生した。
前身となるのは「パーラーゲーム」というイギリスの貴族の娯楽で、ビクトリア時代にダイニングテーブル上でワインのコルクを跳ねて遊ぶゲームとして親しまれていた。
その後、ジョン・ジャクエス3世というイギリス人がアレンジして、一族が経営するジャクエス・オブ・ロンドンという玩具屋から”Ping Pong”という名前をつけて世界初の卓球用品を発売した。
卓球を発明し、特許を取った彼のオフィスは、ロンドン東部のホルボーンという場所に位置し、今ではヨーロッパ最大級の卓球バーになっている。
店の名は『Bounce(バウンス)』。ロンドンに2店舗を展開するうちのファリンドン店が発祥の地だ。
卓球が発明されたまさにその地点で、100年以上の時を経て、今では大勢の人々が夜な夜な卓球をして盛り上がる現地を取材した。
卓球発祥の地は、100年の時を超えて卓球バーに
『Bounce(バウンス)』は、ファリンドン駅から徒歩5分、大英博物館から徒歩15分の場所に位置する。
オフィスビルに挟まれた小さな入り口は、一見すると地味な印象を受ける。屈強そうな男性からの荷物チェックを終え、地下に降りると受付がある。暗めの空間にカラフルな照明が灯り、赤い壁にはピンポン球の模様が描かれている。
受付の隣には、1901年に世界で初めて発売されたラケットが展示されている。当時のラケットはラバーが貼られておらず、現在の形状よりも板の部分が小さく絵の部分が長かった。
受付を抜けてさらに階段を降りると、卓球バーと言われて想像する景色とは程遠い空間が広がる。卓球台が並んでいるのかと思いきや、ブラックライトがきらめく広いバースペースとダンスフロアで大勢の人が飲んだり踊ったりしていた。
取材時には、最新のビルドボードチャートに名を連ねるような流行りの曲が大音量で流れ、卓球には目もくれずに踊る人も多かった。ハロウィンの時期だったこともあり、マイケル・ジャクソンの「Thriller」が流れるとあちこちから大合唱が聞こえた。
バーというよりもクラブと呼ぶ方が相応しく、パーティーやダンスを好む国民性が反映された空間だ。
奥には17台の卓球台があり、ブラックライトで光る台はそれ自体がイルミネーションの役割を担っていた。
来店者層は20〜30代の男性が中心で、平日でも人混みをかき分けないとトイレにたどり着けないほど大勢の人で賑っていた。女性もいるが、女性だけで来ているグループはほとんどいない。
卓球のレベルは様々で、見惚れるほど上手い人も、スカートにヒールを履いた卓球経験が全くないような人もいる。
卓球初心者でも楽しめるゲームが充実
バウンス最大の売りは、「ワンダーボール」と呼ばれるゲームのできる卓球台だ。動画のように、6種類のゲームができる。卓球台の真上からプロジェクションマッピングで画面を投影し、ゲームができる仕組みになっている。
勝敗が卓球の強さによって左右されないゲームもあり、「卓球できないからピンポンバーはちょっと…」という人も思いきり楽しめるのが魅力だ。
ゲーム画面が投影されている卓球台は、なんと2012年のロンドンオリンピックで使われた公式の台。最高の舞台で使用されたその台は、一見の価値があるだろう。
卓球が発明されたその土地は、現在ではヨーロッパ随一の卓球スポットとして夜な夜な盛り上がっていた。
ガイドブックには載らない「卓球の歴史を感じる観光名所」としてロンドンを訪れた際に覗いてみるのもよいだろう。
お店情報
Bounceファリンドン店
住所 121 Holborn, London, EC1N 2TD
連絡先 020 3657 6525
公式サイト http://www.bouncepingpong.com/
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